「紫電改」引き揚げ後世に 鹿児島沖、終戦80年目指す
太平洋戦争末期に開発された旧日本海軍の戦闘機「紫電改」のうち1機が、鹿児島県阿久根市の沖合に沈んだままになっている。地元の市民団体は戦争の悲惨さを後世に伝えようと、終戦80年となる来年8月15日までの引き揚げを目指す。最低でも1千万円の資金が必要となる見通しで、クラウドファンディングなどで集める方針だ。 零式艦上戦闘機(ゼロ戦)に代わる新鋭機として造られ、約400機のほとんどが戦後処分された。国内では愛媛県に1機展示されている。 阿久根沖の機体には林喜重大尉(神奈川県出身)が搭乗していた。1945年4月21日、米軍B29爆撃機の撃墜に向け、出水市上空に出撃。交戦の末、隣接する阿久根市の海に不時着し戦死した。周辺住民らが火葬し、機体は放置されていた。 歴史資料館で専門員を務める肥本英輔さん(70)=出水市=がその存在を知ったのは、昨年4月のことだ。行政などに支援を求めたが積極的な対応はなく、自ら結成した市民団体で引き揚げると決意。今年4月に初めて潜水調査し、水深約3メートルで発見した。