【ライバルはスマートフォンです】 メルセデス・ベンツ新型Eクラス 3モデルを比較一気乗り
コンサバ一辺倒のドライバーズカーではない
結論から述べておこう。新しいEクラスのライバルはもはや同じクラスや価格帯の車というより、令和のドライバーズカーとして大真面目にスマートフォンにケンカを売っている。 ようは、貴方のパートナーは電話機ではなくEクラスですよ、と。そういう強い主張を、あらゆる方向から囁いてくる。 というのも、センターディスプレイから(オプションの)助手席ディスプレイにまで展開する新世代MBUXが、充実どころか完結している。サードパーティーのアプリを直接ダウンロードできるため、Zoom等を入れれば車内でオンライン会議も可能だし、車両の5G通信でストリーミングの音楽も聞ける。 助手席側は別アカウントでログインでき、メールやメッセージ系などスマホ側のアカウントやテザリングが前提の機能もあるが、何なればアンドロイドやカープレイにエミュレートしなくても、個人のビジネスエクスプレスとして書斎として、用が足りてしまうほど分厚く完成度の高いインフォテインメントなのだ。 些細なことだがラジオの画面で、FM各局のロゴが3Dのカルーセルスライダーになっているのにも驚いた。他の輸入車ブランドのローカライズでは無論、国産車もサボりがちな表示ひとつのデザインにも、スキがないのだ。 ちなみに車載オーディオ、ブルメスター4Dサラウンドシステムは、音楽に合わせて照明の色やトーン、さらにシートに振動さえ伝えてくる。スマホにはできない何かだ。 なぜメルセデスがインフォテインメントに注力するかといえば、欧州ならびにドイツ人のGAFA嫌いは知られた話で、今や顧客のプライバシーを守ることは優先事項のひとつ。それは今日のセキュリティ感覚で、メルセデスが連綿と続けてきた安全神話の延長でもある。 メルセデスがエンタメ化したのではなく、質実剛健がデジタル・エンターテインメントをとり込みつつあるのだ。それこそEクラスというドライバーズカーの指標がリードすべき方向性であり、メルセデスらしい進化といえる。