高級宿の温泉に"お金を払わずに入れる"ワザ 新潟・六日町温泉で5時間働けば1泊無料のワーケーションとは?
さかとケの一日は?こんな過ごし方ができる
仕事の種類は、宿の掃除や皿洗い、夕食出しといった単純作業で、時間は午後5時~同10時か午前7時30分~午後0時30分のいずれか。たとえば、夕方5時から仕事をするならば、到着後、日中の時間はフリータイムだから、パブリックスペースで自分の仕事をしてもよい。 仕事が終われば、やわらかな湯を湛えた大浴場で温泉に浸かることもできる。この大浴場は一般のお客様も利用するから、ラグジュアリークラスの宿の風呂にタダで入れてしまうというわけだ。 「ryugon」の温泉は、疲労回復に効果の高いナトリウム‐塩化物泉。重厚かつスタイリッシュな国の登録有形文化財に指定された建物を通り、土蔵造りの趣ある湯屋へ。労働した後の温泉は最高だ。温泉に浸り、さらにサウナで汗をかけば、極上の眠りにつくことができるだろう。 「さかとケ」のホームページには、利用は「最大6日まで」と書かれているが、日程に関してはフレキシブルに対応していて、1泊利用の人もいれば、これまで最も長く滞在した人は2週間だったという。決められた時間以外はフリータイムなのでスノーボードや地域のフィールドワークなど、何をしても自由。終了時に自室を清掃して帰るなどの決まりを守れば、レンタサイクルや共同のランドリーを使用できるなど、特典も多い。 2022年のサービススタートから2年半の間に利用した350名のうち、多くは大学生のインターンシップ(就労体験)だが、社会人でうまく活用している人もいる。 月に1度のペースで訪れる50代男性のITコンサルタントは南魚沼が大好きで、町のボランティアやイベントの手伝いをしに当地を訪れ、宿泊場所として「さかとケ」を定期的に利用しているそうだ。
クリエイターやアーティストも受け入れたい
かつて全国の温泉旅館には、器や掛け軸、書などの作品を宿賃代わりに残していった陶芸家や書家などのクリエイターたちが存在していた。 「さかとケ」でも今後は「現代のクリエイターやアーティストが自身の作品やパフォーマンスを披露する場としても機能させていきたい」と考えている。自身の作品を温泉宿で制作してみたいという人は、名乗りをあげてみてはいかがだろうか。 【六日町温泉】 六日町温泉の歴史は比較的新しく、昭和32(1957)年、天然ガスの試掘とともに湧き出した。越後三山(中ノ岳=2085m、駒ケ岳=2003m、八海山=1778m)や、日本百名山の巻機山(まきはたやま、1967m)など2000m級の山々を望むのどかな田園風景は療養に最適で、昭和39(1964)年には環境省の国民保養温泉地に指定されている。泉質は塩分が含まれ、保温効果の高い「ナトリウム-塩化物泉」とクセの少ない無色透明の「単純温泉」の2つ。3本の源泉を12軒の宿が使用しているが、温泉街を形成しているわけではなく、それぞれの宿が点在している。 【宿データ】 『さかとケ』 住所:新潟県南魚沼市坂戸1-6 電話:025-772-3470 泉質:ナトリウム-塩化物泉 アクセス:JR越後湯沢駅の「HATAGO井仙」から送迎車で約30分 https://ryugon.co.jp/sakatoke/ 文・写真/野添ちかこ 温泉と宿のライター、旅行作家。「心まであったかくする旅」をテーマに日々奔走中。「NIKKEIプラス1」(日本経済新聞土曜日版)に「湯の心旅」、「旅の手帖」(交通新聞社)に「会いに行きたい温泉宿」を連載中。著書に『旅行ライターになろう!』(青弓社)や『千葉の湯めぐり』(幹書房)。岐阜県中部山岳国立公園活性化プロジェクト顧問、熊野古道女子部理事。 https://zero-tabi.com/