元LINE・CEO森川亮氏「シンプルなマネジメントは、管理しないこと」
THE PAGE
今年3月、LINE株式会社のCEOを退任した森川亮氏が、新著『シンプルに考える』(ダイヤモンド社)を上梓した。仕事を上手にこなすための攻略本だと考えると期待を裏切られるかもしれない。本文には「モチベーションをあげてもらいたいと思う人は失格」「無駄な会議はするな」などと、厳しい言葉も並ぶ。LINEを成功に導いた森川氏のビジネスパーソンに向けたメッセージとは?
社員教育はやりません。モチベーションも上げません
もし、あなたの会社の社長が「社員教育はバカバカしいからやめます」などというメッセージを発したら、思わず声を上げるか、怒りがこみ上げてくるだろう。「成長できないのは会社が教育しないからですよ」。こう反論する社員もいるはずだ。 その反論に対する説明はこうだ。「経営者として社員を愛していたが、愛というのはそんなに軽いものではない。本当の愛は、未来永劫しっかり生きていける力を身に付けること」。厳しいビジネスの世界で生きていくためには、そこで戦える力を身に付けることこそが大事だという。 だから、社員教育は行わないし、モチベーションを上げることもしない。プロなら自分の情熱に突き動かされて、指図されなくても成果を上げられるはずだからだ。森川氏が求める社員は、「スキルや経験だけでは足りない」。評価システムがなくてもやり続ける情熱が大事だという。
現場が動けば、マネジメントはシンプルになる
森川氏は、今年4月に動画ファッション投稿サイト「C CHANNEL」を運営するC Channel株式会社を立ち上げたが、その際、社員を集めるために一番重視したのは「会社の考えに共感できるメンバー」だったと打ち明ける。さすがに初対面ではその情熱を持っているかどうか分からないため、自分が評価できる人材をかき集めた。 面識のない人たちに会社に加わってもらうためには、共感できる「コア」、たとえばビジョンやミッションが必要だが、森川氏は「紙に落とせば共感するだろうというのが間違い」と形式化したメソッドを否定する。 モチベーションを自分で上げて維持できる人が一つの目的のために集まるとその組織は強い。森川氏には、会社を経営していくうえで「会社は、ヒット商品を作り続けることがすべて」という信念がある。しかし、「会社というのは、特に上場すると、数字のために働くようになってしまう」と話す。その一方で「数字のことだけ考えると逆にお客さんが離れる」という葛藤も出てくる。 売上目標を持て、いいものを作れと、2つのゴールを与えると現場は悩む。しかし、「ヒット商品」を作れと言うと指示はシンプルに収まる。余計なことを現場に考えさせないという考え方だ。 現場において、社員が自ら動いてくれることで、会社は活気づく。「今も昔も変わらない考え方は何か?」という問いに、森川氏はこうシンプルに答えた。「管理しないということですかね」。 ダイヤモンド・オンライン「LINE前社長・森川亮氏の経営哲学 「ビジョンは不要、やる気のない社員もいらない」」