トランプ新政権への期待と関係ない? データでわかった回復基調の世界経済
11月の米大統領選後、米国を筆頭に日本、欧州など先進国の株価は大幅に上昇し、NYダウは遂に2万ドルの大台を突破しました。世間では“トランプ相場”、“トランプラリー”といった呼び方が定着しています。トランプ大統領の掲げる経済政策が米国の経済成長を加速させるとの見方から投資家が楽観姿勢を強めたのは事実でしょう。 このように16年11月以降の株価上昇にトランプ大統領が大きく貢献したことは間違いありませんが、そうした将来の経済政策に対する期待だけで、ここまでの株価上昇が説明可能かといえば、それには違和感を覚えます。確かにトランプ大統領の掲げる一連の経済政策は減税・規制緩和など目先の経済成長率、企業収益を上向かせるものが目白押しですが、一方で民間の経済活動を減少させるような保護主義的な政策も打ち出されており、それは経済に好ましくない影響を与える可能性があります。メキシコ、中国に対する関税(国境税、国境調整税)はその最たるものです。また、トランプ大統領の真意不明な過激発言も経済全般、特に株式市場にとってマイナスと考えるのが自然でしょう。(解説:第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
大統領選後の株価上昇、新政権への期待以外の要因とは?
こう考えると大統領選後の株価上昇について、その要因を冷静に再考する必要があるように思えます。筆者は、従前より16年秋口頃から世界的に景気回復の兆候が至るところで確認されていることに注目し、トランプ政権“以外”の要因が大きな役割を果たしていると主張してきましたが、その見方が正しかったことに自信を深めています。
ここで改めて世界経済の動向に目を向けると、企業の景況感を示すPMIは先進国・新興国を問わず世界的に改善傾向にあり、直近のグローバル総合購買担当者指数(PMI)は1月に53.9へと伸びを高め、2015年3月以来の高水準に回帰しています。
特に先進国のそれは改善傾向が顕著で、製造業PMIは54.2と14年3月以来に達し、サービス業も54.5と一段の改善を示しています。また、先行きの生産活動に目を転じると、新規受注・在庫バランスの上昇持続が好感されます。この新規受注・在庫バランスは在庫が減少して受注が回復傾向にあることを意味していますので、目下の増産傾向が暫く続く可能性を示唆しています。こうした改善傾向は日本も例外ではありません。日本の経済産業省が発表する生産統計では在庫の減少と生産の増加傾向がはっきりと示されています。