「クマ避けの鈴」を過信してはいけない…研究者が実感する、クマに起きた「最悪の変化」
クマよけの鈴を過信してはいけない?
北海道で報告されるヒグマ被害や目撃例は、その大きさのインパクトも相まって話題になりやすい。しかし、本州の比較的広い地域に生息するツキノワグマも、ヒグマ同様に注意が必要だという。 「ヒグマに比べれば体も小さいですが、ツキノワグマによる死傷事故や遭遇案件も近年、急速に増加しています。以前とは、状況が変化していることを認識して、十分に注意しなければなりません」 山でクマ被害を防ぐには、クマに会わないことが最も大切だ。遭遇することを避けるために、さまざまな道具や登山の心得が推奨されてきた。 しかし、その状況も変わってきている。これまで山林に入るとき、“クマよけの鈴”を装備することはクマ被害を防ぐ上で有効だとされてきたが、その効果を過信してはいけないとA氏は注意を促す。 「ツキノワグマからしても、人との接触は人から危害を加えられる可能性が増すので、人となるべく遭いたくない。これまでは、ほとんどのクマは人の気配を感じると、人から遠ざかる習性をもっていると考えられてきました。しかし、最近報道されている、クマの出没地域や出没時間、遭遇した人に対する反応を耳にすると、最近は、状況が変わってきたように思います。 クマの活動範囲が拡大したことで、人里に出ることが増えるうちに、農作物やゴミ捨て場などを漁ることも増えているようで、その間に、一部の個体は、『人は怖くない』と学習している可能性があります。 15年くらい前までは、クマが生息する地域の山林に入るとき、クマよけの鈴をもっていけば大丈夫と、安心していました。しかし、人を恐れないクマの振る舞いがあちこちで確認されるようになり、最近は、クマよけの鈴をならしながら歩いても、本当に効果があるのか不安に思うようになりました。人を恐れないクマは鈴の音を聞いても逃げてくれないでしょう。 鈴の効果を過信せず、最近は、入山前にクマの出没情報に以前には考えられないほどの注意を払うようにしています。人里や人の活動域に頻繁に出没しているという情報があれば、計画変更も検討するようになりました」 合ってしまった時のことも考慮に入れて、クマよけのスプレーなど護身用の道具を常備しておくことも大切だ。行政などは登山客への注意喚起が求められる。
現代ビジネス編集部