じつは「正五角形」では「平面」を埋められない…埋め尽くす非周期タイルを、なんと「2種類」にまで絞り込んだ「驚愕のヒント」
ペンローズ・タイルと準結晶のふしぎな関係
上図の左はペンローズ・タイルによる平面充填の一部で、非周期にしか並べることのできない、たった2種類一組の図形でできています。ペンローズ・タイルにもいくつかのタイプが知られています。 ロジャー・ペンローズは、正五角形に着目することで非周期タイルの組の要素を2種類まで減らすことに成功しました。それまでの最少記録だった6種類からの、大きな前進でした。 ところで、従来の結晶学で考えられていた物質の分子構造は、三角形と四角形(あるいは六角形)が中心でした。それらの構造が安定しており、平面(あるいは空間)を敷き詰めることができる、一種のテセレーションともいえるものだったからです。 他方、正五角形は平面上を隙間も重なりもなく敷き詰めることができません。したがって、正五角形を基本とする物質は、この世に存在しないものと考えられていたのです。 ところが1982年、特殊な実験下においてではあったものの、イスラエルのシュヒトマンによって正五角形を基本とする物質が発見されました。そして、そのX線回折写真は、驚くことにペンローズ・タイルを並べた図を想起させるものだったのです。 正五角形は平面を埋めることはできませんが、立体(3次元)だと正十二面体や正二十面体のように成立しうるという事実が、理論的な背景にありました。のちにこの物質は、「準結晶(quasicrystal)」と名付けられました。 ---------- ペンローズの幾何学 対称性から黄金比、アインシュタイン・タイルまで 「存在しない」と考えられてきた図形「アインシュタイン・タイル」が、2023年、ついに発見されました。 非周期モノ・タイルとよばれるこの図形は、いったいどんな形状で、どこがどうすごいのか? 数学者だけでなく、アマチュア愛好家によっても偉大な発見が続々となされてきた平面幾何の世界。 パズル感覚で楽しむことができ、しかも奥行きの深いこの分野で、「次の大発見」をもたらすのは、あなたかもしれない! ----------
谷岡 一郎(大阪商業大学学長)/荒木 義明(数学者)