じつは「正五角形」では「平面」を埋められない…埋め尽くす非周期タイルを、なんと「2種類」にまで絞り込んだ「驚愕のヒント」
「非周期的」な模様
一方、ある模様が「非周期的」(英語ではnon-periodic)であるとは、「どの領域を2方向に平行移動でつなぎ合わせても、平面充填としてその模様を作れないこと」であるといったんしておきましょう。ただし、単純な模様の場合は、非周期的であることを「平行移動でピッタリと重ねることができない領域」を見つけることで判別できます。 注意が必要なのは、ある種の図形の形状は、周期的な模様にも非周期的な模様にも並べることができる点です。たとえば、次の図はいずれも、単純な非周期的な模様の一部を示したものです。 個々の図形の形状はどれも単なる二等辺三角形ですが、(ア)は周期的に並べられた模様の一部をずらすことで、一部分でピッタリ重ねることのできない領域ができ、非周期的になっています。(イ)の中心点を囲む領域は、平行移動で重ねることはできません。そのため非周期的な模様だといえます。 (ウ)は水平なラインに沿って、三角形1個分ずらした並べ方で、中心点(らしきもの)は2つあります。三角形1個分ではなく、2個分ずらしたのが(エ)の並べ方ですから、3個、4個……とずらしても非周期的な模様であることに変わりはありません。 つまり、非周期的な模様となる図形の並べ方は、何通りも(無限に)あることがわかります。
「非周期タイル」とは
そして、『ペンローズの幾何学』の重要な位置を占める「非周期タイル」とは、「非周期的な模様にしか並べることのできない」形状の図形(aperiodic tile)、もしくは複数の図形の組(aperiodic tile set)を指します。 先にも触れましたが、1964年に最初の非周期タイルの組(2万426種類)が発見されるまで、そのような図形(もしくは図形の組)が存在することすら、疑問視されていたことをもう一度強調しておきます。 周期と非周期に関するさらに詳しい話は『ペンローズの幾何学』第2章で解説します。第3章はその続きとして、ロジャー・ペンローズが発見した「ペンローズ・タイル」を中心に話を進めることになりますが、まずはここで、ペンローズ・タイルと、それを構成する2種類一組の非周期タイルをご覧いただきましょう。