森田美勇人「濡れごろ」
写真を撮ることにこだわりを持つアーティストや俳優・声優による連載「QJカメラ部」。 【写真】愛用するカメラで自撮りする森田美勇人 土曜日はアーティスト、モデルとして活動する森田美勇人が担当。2021年11月に自身の思想をカタチにするプロジェクト「FLATLAND」をスタート、さらに2022年3月には自らのフィルムカメラで撮り下ろした写真をヨウジヤマモト社のフィルターを通してグラフィックアートで表現したコレクション「Ground Y x Myuto Morita Collection」を発表するなどアートにも造詣が深い彼が日常の中で、ついシャッターを切りたくなるのはどんな瞬間なのか。
わたし好みの時間
第110回。 梅雨がいまだ曖昧な態度でこちらに近づいてくる厄介な日々。 基本的に散歩で移動する自分にとっては朝に決める服装がぐらつくのである。 来る夏を存分に味わいたいため、理想はTシャツに半ズボン、足元はサンダルと大人のだらしなさと子供の好奇心を共存させた身軽スタイルで過ごしたいのだが、夕暮れ時に降られた場合に生じる寒さに怯え、ゴアテックスのスニーカーを出したり引っ込めたりの玄関前。 結局はそのときの快楽に溺れてサンダルを履き、雨の夕方に足元を冷やすのが最近のオチである。 写真はいつかの失敗した夕立。 雨は嫌いではない。 地面を打つ雨粒に跳ね上がった土の香りや葉の隠れたえぐみなどが鼻をつく感覚には、生活に疲れて鈍感になった心を揺さぶり、それと同時に煩わしかった耳元で叫ぶ羽音がピタリとやむ安堵も重なって、夏は特に好意を抱く。 そんなわたし好みの梅雨時間。