2013年 福島原発の状況はどうだったか
私はこれまで2013年3月、11月の2回、報道公開に参加しています。 公開時、報道陣を乗せたバスは必ず1~4号機の原子炉建屋海側の道路を走ります。今では撤去されましたが、事故から2年以上経た時点でも建屋そばには津波で横転した作業車両が転がっていました。海側のポンプなども津波の影響で破壊された状態です。 2回の公開とも2~3号機に近づくと個人用に携帯した警報音設定値・毎時100マイクロシーベルトの線量計が鳴りました。海側と反対の建屋群山側を通っても同じ2~3号機周辺で警報音が激しく鳴ります。 3号機は事故当時最も激しい水素爆発を起こし、使用済み燃料プールがあるオペレーションフロア部分では折れ曲がった鉄筋などが折り重なっている様が確認できます。ここは毎時700ミリシーベルト超の線量があり、がれき撤去も無人重機に頼っています。警報音が鳴ったのはそうした場所だからだと推察できます。
4号機も水素爆発を起こし、13年3月時は4階の外壁が崩れ、一部鉄筋も見えていました。この時は4号機の使用済み燃料取り出しの建屋カバーという設備が建設中で、11月の公開時はこれが完成し、建屋内の使用済み燃料プールまで入りました。その様子は一見すると過去に私が見た通常の原発のものに近く、爆発の痕跡は目にしませんでしたが、線量計の数字は時に東京都内での空間線量の約800倍にあたる毎時80マイクロシーベルトを示しました。 1~3号機はメルトダウンした核燃料冷却のため注水が続いていますが、損傷した原子炉格納容器などから水が漏れ、隣接するタービン建屋に高濃度汚染水として滞留しています。現在はこれを汲み上げ、セシウムを吸着して大型タンクに保管していますが最終処理には難渋しています。このため東京電力ではタンク保管の汚染水からトリチウム以外の62種類の核種を取り除く多核種除去設備(ALPS)を導入して試運転中。ALPSが設置された建物の中に入ると、放射性物質を取り除く複数の吸着塔に細々とした配管が接続され、ある種、異次元空間のような錯覚を覚えます。 こうした1つ1つが廃炉作業の困難さを物語っているように思います。 (ジャーナリスト/村上和巳)