「僕なんて死んじゃえばいい」発達障害の息子と“情緒学級”求め転居…支援必要な児童「10年で2倍以上」も地域でバラつく対応
「僕なんて死んじゃえばいい」支援を求めて退職・転居も
発達障害の子どものケアのために保護者が退職・転居したケースもある。Aさんの長男は、小学1年生の夏休みに「僕なんて死んじゃえばいい」と話すようになり、夏休み明けには登校しぶりが始まった。近所にあった児童精神科に相談したところ、自閉スペクトラム症と診断された。 「大人数で過ごすのが苦手な特性がある長男は、同級生から『死ね』などとからかわれたことで、学校が怖くなってしまったようだ」(Aさん) 2年生になった長男は「もう頑張れない、つらい」と、外出すらできなくなった。同時期に、自閉スペクトラム症と注意欠如・多動症と診断された長女も登園できなくなり、Aさんは子どもたちのケアのため退職した。 当時住んでいた地域は発達障害や不登校への理解が乏しく、「診断がついても、保健室登校すら認めてもらえなかった」と振り返る。主治医に相談したところ、発達障害に理解のある地域への転居を提案され、数ヶ月後、Aさん一家は都内に引っ越した。 通級指導学級で理解のある先生と巡り会った子どもたちは、少人数だと学校でも過ごせるようになった。しかし、少人数で過ごせる通級指導は週1回、数時間だけ。Aさんは長男の中学進学を控えて、少人数で週5日過ごせる情緒学級に入るため、2度目の引っ越しを決めた。 現在、長男は情緒学級に在籍しながら、自ら通常学級で過ごす時間を増やすなど、挑戦を重ねる日々を送っている。 「中学進学後、ほぼ休まず情緒学級に通えたことで自信がついたようだ。安心できる居場所として情緒学級があるからこそ、いま通常学級での学びに挑戦できている」(Aさん)
自治体に情緒学級があっても残る課題
住んでいる自治体に情緒学級があっても、支援体制が十分とは言えない。自閉スペクトラム症の長女が情緒学級に、次女は通常学級に通う都内在住のBさんにも話を聞いた。 かつて長女が受けていた通級指導について、「なかには日常生活が改善される子もいるが、それはかなり軽度な発達障害の場合。長女の場合、残念ながら改善は見られなかった」と、Bさんは振り返る。 通常学級の授業についていけず、つらそうな長女の様子を見て、3年生への進級時に情緒学級への転籍を決めた。在籍校には情緒学級がなく、転校を嫌がった長女だったが、情緒学級に通い始めると授業についていけるようになり、みるみる自信を取り戻していった。 現在、長女がかつて通った小学校に次女が入学し、姉妹別々の小学校に通うが、「情緒学級へは、自治体が運営するスクールバスで通学できるので、そんなに困ることはない」とBさんは話す。しかしながら、自治体内にひとつしかない情緒学級に通うため、朝から1時間もスクールバスに揺られて登校する子どももいるそうだ。 「自治体に情緒学級があっても、学区外の場合、転校や通学時間の問題が出てくる。スクールバスのない自治体の場合、保護者の送迎も大きな問題となる。全校に情緒学級が設置されれば、子どもたちに必要な支援が届きやすくなるのでは」(Bさん)