サボテンだけがもつ「アレ」って? どうしてそんな形になったの?
多肉植物ブームが続くなか、一部で熱いブームを巻き起こしているのがサボテンです。過酷な環境に適応するために進化した姿は、驚くほどの多様性を誇り、園芸家たちを魅了しています。『NHK趣味の園芸 12か月栽培ナビNEO 多肉植物 サボテン』(著・山城智洋)から紹介します。 いろいろなサボテンの種類
サボテンだけが「刺座(しざ)」をもつ
サボテンは刺座(アレオーレ)をもつ、サボテン科の植物です。「刺座」はとげのつけ根にある、とげを出すための器官です。刺座が毛で覆われることもあります。とげのないサボテンもありますが、サボテンには刺座が必ずあります(刺座がわかりにくい種類もあり)。とげには、密集させて強光や高温から植物体を守る、鋭いとげで動物を遠ざけ食害を防ぐなどの働きがあります。 サボテンは多肉植物に含まれます。しかし、サボテンには種や変異が多く、多肉植物のなかで占める割合が大きいため、昔から園芸界では「多肉植物」を、「サボテン」と「サボテン以外の多肉植物」とに分けて扱っています。サボテン以外の多肉植物はサボテン科ではなく、とげがついていても、刺座はありません。 現在は、ほぼすべてのサボテン科植物がワシントン条約(CITES)の規制対象に該当するため、自生地株の輸入ができなくなっています。
水分を蓄えるために進化
サボテンの分布域は南北アメリカ大陸と周辺の島々の乾燥地帯です(リプサリス属の一部を除く)。低地から高山まで広く分布しています。乾燥地帯に適応するため、葉や茎が多肉質になり(コノハサボテン)、葉をなくして肉厚のうちわ状になり(ウチワサボテン)、より多くの水分を蓄えるために柱状になり(柱サボテン)、さらに表面積を小さくして水分蒸発を減らすために球状になった(玉型サボテン)と考えられています。地中に塊根をつくるもの(塊根性サボテン)もあります。
無理に大きくしない
サボテンは成長がとても遅い植物です。自生地の大きなサボテンは、そのサイズになるまでに少なくとも数十年かかっています。大型のサボテンは特に、ある程度の大きさにならないと、種の特徴が現れません。小さなうちは稜(りょう/ひだ状〈折り目状〉になった部分)や刺座の数が少なく、刺座の間隔が広いため、大きな株とは姿形が異なります。 サボテンは栽培下で最適な環境を整えたとしても、急に大きくはなりません。生育を早めるために水や肥料を多めに与えると、成長は多少早まりますが、腐りやすい株になってしまいます。無理に大きくしようとは考えず、時間をかけてゆっくり大きくしていきましょう。
*本記事は『NHK趣味の園芸 12か月栽培ナビNEO 多肉植物 サボテン』(NHK出版)を抜粋・再編集したものです。