長野智子氏が見た 日本の女性活躍が進まない「謎」 男女格差G7で最下位 田原総一朗氏と立ち上げた超党派勉強会で奔走
トップの意識がカギ
――課題を解決する糸口は見えていますか。 「企業のみなさんはトップ次第だと口をそろえます。トップがいかにジェンダーギャップ解消を優先事項とするかによって大きく左右されると。国会も最大与党が変われば変わる。この問題を重要だと言うだけではなく、政策として議論することが必要です」 「世界でも大きな変化を遂げるのは政権交代のタイミングが多い。ジェンダーギャップ解消を本当に重要だと思っている党が政権をとるというのが一つ。もう一つは、政権交代しないまでも、そういう意識を持った人が与党のトップになるという道もあるでしょう」 「ジェンダー平等に向けて進んでいる企業も、例えば海外駐在が長くて、日本的な男性中心の組織文化である『オールド・ボーイズ・ネットワーク』が好きではなかったという人がトップに就いているというケースが多いです。オールド・ボーイズ・ネットワークで快適にやってきてトップになった人はなかなかそれを変えようとはしません。けれど、いま空前の売り手市場のなかで人材を獲得していくには、変わらない企業は選ばれなくなっていく。女性の労働力なしには立ち行かなくなる日は、本当にすぐそこなんです。機は熟していると思います」
衆院補選の報道で感じたメディアの変化
――ジェンダーギャップ解消に向けて明るい兆しはありますか。 「女性議員や候補者に対するハラスメント対策を議会などに求める法律ができ、各党でも様々な取り組みが出てき始めました。『クオータ制実現に向けての勉強会』は他の党の工夫を知って横展開する場にもなっています」 「メディアも変わりましたね。4月の衆院3補欠選挙で、東京と島根で女性が当選しましたが、おそらくどこも『女性候補活躍』『くのいち躍進』などと偏った書き方をしなかった。メディアは社会の写し鏡です。そこでジェンダーギャップに対する意識が高まってきたのはとても大きい」 ――長野さんご自身、4月から新たにラジオのレギュラー番組がスタートするなど、長く活躍の場を広げていらっしゃいます。 「私の場合は運よく明確にやりたいことがありました。フジテレビに入社した1985年8月に日航機の墜落事故が起き、新人ながら報道現場の動きを見たときに、これを人生の仕事にしたいと強く思ったのが原体験です。『歴史を見る最前列にいるからこそ、そこにいない人たちに何を伝えるかという責任がある』という記者の言葉を聞き、心の中に火がともるような経験をしました」 「報道に携わりたいと思いながら、入社してしばらくは何年もバラエティー番組を担当していました。それでも報道への思いをずっとあきらめなかったことがとても大事だったと思っています。2020年にテレビの報道番組を卒業しても、放送が好きだからポッドキャストなど違う形で続けているうちに、ラジオのお話をいただきました。あきらめずに動いていると誰かが見てくれると感じます」 (聞き手は若狭美緒)