『Eye Love You』は心がとろけるような恋愛ドラマに テオのまぶしすぎる屈託のない笑顔
「さっきまで掃除をする葉っぱでした。でも今はキレイな葉っぱになりました」 巻き上がる枯れ葉たちを眺めながら、このドラマのテーマは“言の葉”なのだと感じた。数多くの言葉が存在するこの世界で、エナジーをチャージしてくれるような“言の葉”に触れること。それが私たちにとってどれだけ幸せなことかが、本作では描かれるのではないだろうか。 【写真】侑里(二階堂ふみ)を助けるテオ(チェ・ジョンヒョプ) 1月23日よりスタートした火曜ドラマ『Eye Love You』(TBS系)。主演の二階堂ふみが演じるのは、目を見つめた相手の心の声が聞こえる“テレパス”という能力を持つヒロイン・本宮侑里だ。彼女は、その能力を持つがゆえに聞きたくない言葉たちに傷ついてきた。しかし、大人の女性としてその能力をうまく使いこなし、チョコレートショップ『Dolce & Chocolat.』の若き社長として活躍する強さも持ち合わせている。 そんな侑里の楽しみは、日々の食事だ。お腹が空くと気持ちの余裕がゼロになってしまうところがある侑里は、すぐに美味しい料理が届くフードデリバリーサービスを愛用中。すると、ある日届いた食事にちょっとしたメモが添えられていることに気づく。それは知らぬ間に紛れ込んだ木の葉のようなもの。人によっては気にもとめずに捨ててしまうものかもしれない。しかし、ラッコのイラストがしたためられた手書きのメッセージは、テレパス能力がなくとも「もっと美味しいものを食べてほしい」という配達員の優しさが伝わってくるようだった。 そんなメモに心を動かされ早速、アドバイス通りに注文してみたところ「人生で一番」と言いたくなるほど美味しいビビンバにありつくことができた侑里。そして感謝の気持ちを伝えるべく、侑里もお礼の言葉をメモにしたためるのだった。そうして顔も知らない配達員との秘密のやり取りが続くうちに、ばったりと2人が出会うタイミングがやってきた。しかし、目が合った配達員の心の声は韓国語で、侑里にはなんと言っているのかがわからない。美味しい料理を教えてくれた配達員のユン・テオ(チェ・ジョンヒョプ)は韓国人留学生だったのだ。 ときに、知りたくない心の声に苦しんできた侑里。かつての恋人にテレパスの話をしたところ「怖い」と思われてしまった暗い過去もある。だからこそ、恋愛なんて無理だと思っていた。ところが、テオの本音はわからない。侑里にとっては新しい発見だったに違いない。でも、いざ心の声が読めないとなると、それはそれでなんだか不安だ。字幕放送にしても「(韓国語の心の声)」としか表示されないので、私たち視聴者も侑里のもどかしさに共感せずにはいられない。 テオは日本に来て2年。日常会話は困らないほど日本語が堪能だが、母国語ではないからか、それとももともと人懐っこい性格だからなのか「かわいい」「会えて嬉しい」と伝える言葉がすさまじくストレート。それが本音から来ているのかどうか、答え合わせをすることもできない。だが、きっと思ったままの言葉なのだろうと思わせてくれる、そんなテオの屈託のない笑顔がまぶしい。 そして、「無邪気」や「能天気」といったまだまだ意味のわからない単語に出会う場面もある。その単語の意味をどういう言葉で伝えようとするのか。その作業の中にも、人それぞれの言葉に対する向き合い方が見えてくるもの。侑里はアルバイト先で「能天気」だと言われたというテオに「前向き」という言葉を選んだ。後に「能天気」には「何も考えてない」といったネガティブな意味もあることを知ったテオは、嬉しそうに侑里を「やっぱり素敵な人だ」と思い浮かべる。 そうして通り過ぎるだけで終わっていたかもしれない2人が、一つひとつの言葉を通じて心を通わせていく。そして言葉になっていない部分をもっと知りたくなる。その好奇心がやがて「恋」に変わっていくことをテオは予感している。その想いを確信に変えるべく「僕のことは好きですか?」とド直球な言葉を投げかけるテオに、まだ何も答えられない侑里。でも、もう彼の存在は侑里の心の中にしっかりと舞い込んでいるのは明らかだ。 そんな「恋」へと一歩ずつ歩み進めていく段階で、テオが「Dolce & Chocolat.」のインターンとしてやってくる、そんなベタな展開もまた楽しい。どこか人を愛することに臆病になっている侑里の心を、素直で前向きなテオがどうやって溶かしていくのか。そして、今のところ仕事以外に興味はないといった態度でいる、侑里のビジネスパートナー・彰人(中川大志)の存在も気になるところ。 もしかしたら社長とインターンという複雑な関係性になった2人は、ビジネスの場とプライベートの場で言葉を使い分ける難しさにも直面するのではないだろうか。だが「好きだと思うから好き」とラッコへの愛をまっすぐに語ったテオのことだ。恋に変わった侑里への想いを、人目も憚らずにまっすぐにぶつけてくるはず。そんな2人のやりとりの苦さと甘さのギャップに、侑里の心より先に視聴者がとろけてしまうかもしれない。
佐藤結衣