公立学校の教員増を検討 少子化なのに先生は足りないの?
文部科学省は来年度の概算要求で、公立学校教職員数の「基礎定数」を増やすことを検討しています。これには、2度の政権交代を経ても教職員定数の本格的な改善ができなかった同省の“悲願”も込められているようです。世は少子化なのに、先生の数を増やす理由はどこにあるのでしょうか。逆に言えば、なぜ先生の数は増やせないのでしょうか。そもそも、先生の数はどうやって決まるのでしょうか。
児童生徒数と学級数を基本に算定
公立の小・中学校や特別支援学校の小・中学部の教職員数は、「義務標準法」と通称される法律によって算定されます。これを「教職員定数」といいます。教職員定数には2種類があり、児童生徒数に基づく学級数に見合った定数を「基礎定数」、少人数指導やいじめ・不登校対応など教育課題に対応するために都道府県の申請に応じて配当される定数を「加配定数」と言います。 こうして算定された教職員定数に基づく教員の給与費は、3分の1を国が、残り3分の2を都道府県が負担することが、別の法律(義務教育費国庫負担法)で規定されています。なお、公立高校は義務教育ではありませんが、「高校標準法」によって教職員定数が決められ、全額が地方交付税で措置されています。
定数改善は足踏み、初の「純減」も
教職員の数は教育の質にも直結するため、国はこれまで7次にわたる計画を立てて教職員定数の改善を図ってきました。第1次計画(1959~63年度)では50人学級、第2次計画(64~68年度)では45人学級、第5次計画(80~91年度)では40人学級が実現しています。 一方、基礎定数は学級数を基本に算定されるため、児童生徒数が減れば当然、学級数が減り、教職員の絶対数も自動的に減っていくことになります。これを「自然減」と呼んでいます。近年は少子化が進んでいますから、定数改善をしなければ自然減も進行していきます。 文部科学省は小泉純一郎内閣下の2006年度概算要求で第8次定数改善計画を策定しようとしましたが実現せず、それ以降は計画の要求さえできずに単年度ごとの小幅な改善にとどまる状態が続きました。民主連立政権は全学年を35人以下学級にするなど大胆な定数改善計画を策定しようとしましたが、小学校1年生だけは基礎定数の改善で35人学級を実現できたものの、後は加配定数によって同2年生の36人以上学級を解消するのがやっとでした。再度の政権交代を挟んだ13年度予算でも新計画策定は実現せず、14年度はわずか10人 とはいえ合理化によって教職員定数を削減する初の「純減」にさえなりました。