公立学校の教員増を検討 少子化なのに先生は足りないの?
いまの教員定数では「足りない」
国際教員指導環境調査(TALIS)の結果にもみられる通り、日本の教員が世界的にも「多忙」なのは確かです。現行の学習指導要領(08年告示)では授業時数が増えたにもかかわらず、それに見合った定数改善は行われていません。文科省は教員の多忙化解消はもとより学力向上や深刻化する問題行動などへの対応などきめ細かな指導を行うには現在の教職員定数では不十分になっているとして、のため、折に触れて定数改善の必要性を訴えてきました。 しかし公立学校教員の給与費には国庫負担金だけでも約1兆5322億円(14年度)と、莫大な予算を要します。財務省サイドは、国全体の財政難はもとより、各種データを示しながら「これまで少人数学級を進めてきたのに、それに見合った学力向上がなされていない。勤務時間が長いのは授業以外の業務が多いためであり、その見直しが先決だ」などと主張。これに対して文科省側もいろいろデータを挙げて反論しているのですが、お互いかみ合わず議論は平行線のまま今に至っています。 学校の統廃合も課題の一つです。学校は地域の核にもなっているため、なかなか地元の合意を得るのは難しいのですが、少子化の急速な進展で都市部、郡部を問わず学年1学級など小規模校化が進み過ぎていることも否定できません。1校当たりの児童生徒数が増えればそれだけ教職員数も増えることになり、効果的な教育ができるだけでなく、全体としても教職員定数を抑えることができます。これまで財務省側も統廃合を進めるよう求めてきましたが、教育再生実行会議の第5次提言にも学校規模の適正化の指針を示すことや、統廃合に際して財政的な支援を行うべきことが盛り込まれました。
文科省の新たな戦略「チーム学校」
そうした中、文科省が新たな定数改善の戦略として打ち出そうとしているのが「チーム学校」です。これまでにも配置されていた事務職員だけでなく、非常勤だったスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどを基礎定数に組み込み、これら専門スタッフ職と教員の役割分担を行うことで、学校全体として教育力を向上させたい考えです。また、これによって生み出される業務の余裕を使って、教員一人一人に課題解決・双方向型授業を行う指導力をつけるなど専門性を向上させることも狙っています。 8月末に締め切られる来年度概算要求で文科省がどのような案を出してくるか、それに対して財務省がどのような査定を行うか、年末の予算編成まで目が離せません。それが本当に学校教育の充実につながるのか、国民目線でチェックする必要もあるでしょう。 (渡辺敦司/教育ジャーナリスト)