違法な取り調べで精神的苦痛…情報漏えいの嫌疑かけられた3佐、国に500万円の損害賠償求める さいたま地裁は請求を棄却、原告側の主張退け「嫌疑には合理的な理由ある」
情報漏えいの嫌疑をかけられ、違法な取り調べにより精神的苦痛を受けたとして、防衛省の3等陸佐(49)が国に500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が4日、さいたま地裁であり、市川多美子裁判長は請求を棄却した。 判決理由で市川裁判長は、「嫌疑には合理的な理由があり、捜査自体が違法となるわけではない」と指摘。3佐使用の端末から出た証拠という裏付けがないとした原告側の主張には「あえて原告の端末との虚偽の報告を行い、罪をかぶせなければならない動機も見当たらない」と退けた。 流出したとされる文書を巡っては、安保法案の審議中の2015年、共産党議員が防衛省統合幕僚長と米軍高官の会談記録を暴露。当時の中谷防衛相らは文書の存在を否定したが、国会質疑の翌日、会議記録と似た文書が秘密文書に指定され、漏えいを疑われた3佐は家宅捜索などの取り調べを受けた。 判決後、浦和区内の事務所で報道陣の取材に応じた代理人伊須慎一郎弁護士は「国防に関する情報は国民の共有財で、公開が原則。秘密指定は最小限にする規定がある」と強調。国側が裁判でも会議記録の存在を認めず、秘密指定に関する内容などを明らかにしなかったとして「国が秘密を雑に管理し、あいまいにした上、裁判所はそれを認定した」と批判した。3佐は「文書は直前まで秘密ではなく、専用のシステムや金庫での管理もされていなかった。判決には納得がいかない」と話し、「判決は国の言い分をそのまま垂れ流し、後付けで秘密にして漏えいの嫌疑をかけるという悪い前例をつくった」と肩を落とした。