【コラム】分裂の政治では「トランプストーム」防げない=韓国(2)
◆防衛費増加と企業補助金削減を懸念 破格的な防衛費増加と対米貿易黒字の解消、補助金約束を信じて急増した半導体と電気自動車、バッテリー分野投資に対する補助金廃止・削減など「トランプストーム」が韓国に向かっている。トランプ政権2期目の交渉は過去のように分野別の交渉でなく、異質の分野が関連する交渉を予告している。彼らと交渉しなければならない韓国はどんな交渉能力があるのか。トランプ氏は経済と安全保障をためらいなく結びつける戦略を駆使するが、韓国はどんな準備ができているのか。 近づくトランプストームに対しては冷静な対処のほか、渡すものを渡して望むものを受けるなどと助言は多い。状況によっては一理あり適切な助言だが、強い者だけを相手として認めるトランプ氏の態度と気まぐれ、連続する不確実性の中で国益を守って確保するうえでカギになるのは国内政治だ。 極端な政治的対立の中でも米国の共和・民主両党は「中国は米国の安保と経済の最大の脅威」という合意を形成した。共和党のトランプ氏が打ち上げた中国に対する関税爆弾を民主党のバイデン大統領はそのまま維持した。トランプ氏が始めた中国の技術崛起封鎖をバイデン大統領はさらに精巧に精密打撃した。トランプ政権2期目はその連続線上から始まる。米中覇権競争が中盤戦に向かう地政学の衝突は、理念と国境を超越したグローバル化時代を歴史の向こうに押しのけている。その衝突の断層ラインに韓国が立っている。韓国を先進経済強国に押し上げた世界史的な状況と構造は揺れて崩れ落ちている。「トランプ氏2.0時代」はさらに急速な断絶と解体を催促するだろう。 ◆韓国、トランプ氏に対応する政治リーダーシップ失踪 想像を超越する台風が吹き荒れるが、突然の戒厳令宣言と解除、弾劾政局の展開は、韓国の危機対処力量と準備態勢を深刻に毀損している。トランプ政権2期目まで残り1カ月余りとなった。最初のボタンを正しく掛けなければいけないが、トランプ氏と首脳会談をする政治リーダーシップも失踪し、トランプ政権と交渉を進める実務ライン、行政システムなどどれ一つまともに作動しにくい状況だ。非常戒厳と弾劾政局、その後の政治状況に対する極度の不確実性が国民の心を押さえつけ、市場を混乱させ、同盟国に衝撃を与えている。世界は韓米日連携の未来に神経を尖らせている。不確実性は市場が最も嫌うものだ。ウォン安が進み、株式市場は「セルコリア」パニック状況だ。政策当局者が市場安定のためにあらゆる手段を動員して奮闘しているが、市場の疑心と厳しい時間争いをしている。 弾劾政局の中で一刻を争う経済関連法案は漂流している。経済と安全保障が結びつく生き残りの時代に、米国と欧州、日本、中国など競争国は補助金を前に出した産業政策で半導体やバッテリーなど未来を決める産業の生産基盤拡充に死活をかけた競争をしているが、韓国政治は「産業政策は大企業だけが利益を得る政策」という視点で時間を浪費している。世界と競争する韓国企業に不利に傾いたグラウンドを平坦にしようとする超党派的な努力を韓国政治に期待することはできないのだろうか。 ◆低成長というブーメランとして戻ってきた規制 経済が政治の人質になった懸念される状況は、先端半導体の絶対強者として君臨する台湾TSMCの創業者モリス・チャンにまで競争会社サムスン電子の心配をさせている。韓国の経済体力はすでに憂慮されるほど弱くなっている。国内外の機関は韓国の潜在成長率が2%を割って1%台に落ちるというぞっとする予測を出している。革新よりも現状安住を追求する規制環境と社会の雰囲気が企業家精神の発現を阻んだ過去の時間が累積してきた結果だ。 環境と安全・工程など各種規制にはそれなりの微細的な正当性があるだろうが、そのすべての規制の合計が韓国経済の躍動性と生態系にどんなマイナスの影響をもたらすかには無関心だった。5年単任政権が発足するたびに自分たちだけの新しい政策に固執する間、政権の寿命よりはるかに長い長距離競走をしなければならない企業の経営環境は破片化、分離化された。その結果が韓国の虚弱になった経済体力だ。成長が弱まっていく韓国が周辺国の威勢に押される国に転落しないと誰が言えるだろうか。そのぞっとする冬の中に入りたくなければ、政治的不確実性が経済に及ぼす衝撃を最小化できる方法に知恵を集めなければいけない。 崔炳鎰(チェ・ビョンイル)/梨花女子大名誉教授