「イタ気持ちいい」の過信はNG...マッサージの「癒やし効果」に科学的根拠はナシ?【最新研究】
マッサージを受けると気持ちよくなるかもしれないが、実際に痛みを和らげるという強力な科学的証拠は、まだ足りないようだ
米国医師会のオンラインジャーナル「JAMAネットワーク・オープン」に7月中旬に掲載された論文は、2018~23年に発表された129件の系統的レビューを対象に、総括的なレビューを実施。 【動画】海外のパパが考案「子供は楽しく、親は気持ちいい」マッサージ方法が画期的 その結果、マッサージが成人の健康状態に関わる痛みを軽減するという証拠について、正しい手法で検証していたレビューは41件しかなかった。そのうち17件は13種類の健康状態を対象としていたが、いずれについても強い証拠は見いだされていなかった。 中程度に確実な証拠であると評価された研究は7件だけで、これらはマッサージ療法と痛みの緩和の有益な関連性を示唆していた。残りは全て、証拠の確実性が低い、または非常に低いと評価されていた。 この分野では多数のランダム化臨床試験が行われているが、痛みを伴う成人の健康状態について「マッサージ療法が他の積極的療法より優れているという中程度または高い確実性の証拠があると評価した系統的レビューは、数えるほどしかないことが分かった」と論文は述べている。 マッサージは組織への血流の増加を促すことにより、乳酸などの老廃物を除去しながら酸素と栄養の供給を改善する。さらに、リンパ系を強化し、毒素の排出を助け、腫れを軽減する。 ニーディング(揉捏法)や、ストローキング(軽擦法)などは、筋線維の癒着や損傷した組織を破壊して筋肉の緊張緩和を手助けし、柔軟性や可動域の改善につながるとされている。 なお今回検証したレビューではスポーツマッサージ、オステオパシー、ドライカッピングやドライニードリング、インナーマッスルのマッサージ、フォームローラーなどの器具を使った自己マッサージに関する研究は、科学的な条件から対象外とされている。
「療法」としての定義を
一連の系統的レビューは、癌に関連する痛み、腰痛、慢性頸部痛、線維筋痛、陣痛、機械的頸部痛、筋筋膜痛、緩和ケアの必要性、足底筋膜炎、乳癌手術後の痛み、帝王切開後の痛み、分娩後の痛み、術後痛などを取り上げている。 これらのレビューの大半が、この分野の研究は証拠の確実性が低いと結論付けており、痛みの管理におけるマッサージ療法の効果を示す証拠について、質の高いランダム化臨床試験が必要であることが浮き彫りになった。 また、マッサージ療法は痛みの緩和にとって一般に有益ではあるが、他の積極的治療に対する優位性を確立するためには、より厳密な研究が必要であることも示唆される。 「マッサージ療法の有効性に関する研究のうち、証拠に少なくとも中程度の確実性があると評価されたものの数は、18年より現在のほうが多いが、まだ十分ではない」 「マッサージ療法を支持するような中程度に確実な証拠がない痛みについては、既存の研究の限界に取り組む新しい研究が必要になる」 論文はさらに、マッサージ療法の定義をより明確にすることが、この分野の進歩のために重要であることも強調している。
ジェス・トムソン(科学担当)