『ヒロアカ』の劇伴作家・林ゆうき キャラクターを音で表現 「連想させるものを重ねて」
■劇伴制作は「作っていて自分がワクワクしたら勝ち」
年間で数百曲以上もの劇伴を手掛け、オファーが尽きない林さん。オファー先からは「いい意味でオーダーと違う曲をもってくる」といわれることも多いといいます。劇伴制作において大切にしていることを伺いました。 ――劇伴制作で大切にされていることはありますか? 音楽を作っている感覚はなくて、映像と一緒に楽しめるコンテンツを作っているといいますか。劇伴の面白いところって、映像と一緒になった時に、1秒(曲)をずらしただけで全然印象が変わったりとか、鳥肌が立つような瞬間が作れたりするので。最終的に映像に合わさった時に、イメージ通りのものとかイメージ以上のものができた時が楽しいし、そういう感覚を、監督にも作品を見てくださるファンの人にも味わってもらえるようにと思いながら作ることが多いです。 ――人の心を揺さぶるコンテンツを作るために意識されていることはありますか? 『ヒロアカ』とか『ハイキュー!!』みたいな、よくオファーをいただく作品のアクションシーンやメインテーマは、作っていて自分がワクワクしたり、筋トレしたくなるなって思えたら勝ちだなと思っていて。作っている時に体が自然と動き出すような、自分がトレーニングに使いたいとか、ダンスしたいって思えるようなもの。リズムだけとかコードだけ(の段階)でも、そう感じとれたら“多分このメインテーマうまくいく”っていうのがあるので。そこの直感というか、自分が楽しくなったりとか、めっちゃいい感じになってきたって思えると、正解なのかなと思っています。
■劇伴フェス開催へ 『SPY×FAMILY』や『NARUTO-ナルト-』の楽曲も
劇伴作家として第一線で活躍する林さんは、新たな活動を続けています。29日には国立代々木競技場第二体育館で、林さんが出演する劇伴フェス『東京伴祭 -TOKYO SOUNDTRACK FESTIVAL- 2023』が開催されます。林さんのほか、アニメ『SPY×FAMILY』の劇伴を手掛ける宮崎誠さんや『NARUTO-ナルト-疾風伝』の劇伴を手掛ける高梨康治さんも出演。アニメ映像と共に、それぞれの作品の劇伴が演奏されます。 2022年9月にも、京都にて同じ出演者で劇伴フェスを開催した林さん。過去にあまり前例のない劇伴のフェスを開催しようと思ったきっかけや、『東京伴祭』への意気込みを伺いました。 ――前回、京都で劇伴フェスを開催したきっかけを教えてください コロナが一番世間で騒がれていた時に、実家の京都に帰ることがあったんですけど。ゴーストタウンみたいになっていて、寂しかったのを覚えているんです。十何年、劇伴のお仕事をさせてもらってたんですけど、恩返しができないかなって思って。僕らの作ったアニメ作品は、世界中で見ていただいていて、愛してもらっている。作品だけじゃなくて、音楽だけ集めたようなコンテンツで海外からお客さんを呼べるものを自分たちで作れないかなって思ったんです。 ――京都での劇伴フェスでは、いかがでしたか? 京都市の人に見に来てもらったら「こんなすごいことだなんて思ってもいませんでした」って言ってくださって。(出演した)宮崎さんも「めっちゃ楽しいし、是非また次回も」って言って下さって。僕がステイホームしてた時に思いついて、友達とか友達の作家に話したりとか、スタッフに絵空事のように話していたことが現実になって、夢見た言葉を話して仲間を集めたらかなうんだっていうところが一番うれしかったですね。 ――29日開催の劇伴フェス『東京伴祭』への意気込みをお願いします 日本アニメの劇伴フェスを作って、何か変えていけたらと思って自ら発信したんですけど。全ての音楽出版の人とか権利元の人たちがコンサートに対して前向きな意見をくださって。アニメの日本のチームでタッグを組んで、(たくさんの人に)見てもらえるようなコンテンツを作れたらいいなと思います。