【医者が教える】せっかくの努力が台無し…「睡眠不足」で太りやすくなる理由
忘年会に新年会、クリスマスや年越し、正月の集まりなど、食事の管理が難しい年末年始。食べ過ぎ、体重増加が気になる人にぜひ読んでほしい1冊が『英国の専門医が教える 減量の方程式』だ。 著者はオックスフォード大学医学部を首席卒業後、食欲や体重管理の研究でイギリスを代表する減量専門医のサイラ・ハミード氏。イギリスで深刻化する肥満人口増加を食い止めるべく、「フル・ダイエット」と呼ばれる減量プログラムを考案。参加者たちは平均16キロ減量、糖尿病の改善、血圧低下など、科学的にめざましい効果が実証された。 ついに刊行される日本語版の本書から、今回は「睡眠」と肥満の関係性について、特別に抜粋してお届けする。 ● 睡眠不足はコルチゾールを上昇させる 睡眠が不足していると、細胞の体内時計はリセットされず、同期がとれなくなります。その結果、生体機能が不適切なタイミングで起こったり、まったく起こらなかったりします。 これは、私たちに不快さをもたらします。このような体内時計の乱れは、体重増加などの健康問題を引き起こす可能性があります。 正常な睡眠パターンでは、24時を過ぎると副腎が活発になり、コルチゾールというホルモンの分泌量が増え始めます。一晩ぐっすり眠ると、目覚める直前にコルチゾールレベルはピークに達し、身体は休息・睡眠モードから抜け出して、活力に満ちた日中モードに入ります。 このような日常的な生理的作用だけでなく、コルチゾールには「ストレスホルモン」としての働きもあります。コルチゾールは、感染症と戦っているときや手術を受けているときなど、身体が強く、例外的なストレスを経験したときに呼び出されるようにも進化してきたのです。 身体は睡眠不足をストレスと見なします。必要なエネルギーがチャージされていない状態で、朝起きて、歩き、話し、活動しなければならないからです。その結果、睡眠不足というストレスに対処し、1日を乗り切るために、コルチゾールレベルが上がります。 通常なら、コルチゾールは朝に上昇してその後は徐々に減少していきます。しかし睡眠不足時は、コルチゾールは一日中高い状態を保ちます。私たちを動かすためのバックアップ発電機のような働きをするためです。 ただし、問題があります。コルチゾールのストレス反応は、あくまで非常事態のためのものです。慢性的な睡眠不足に対処するようにはできていないのです。 また、コルチゾールレベルが高い状態が続くと副作用があります。それは、私たちを太らせるということです。 ● コルチゾールが体重増加を引き起こす仕組み コルチゾールが体重増加を引き起こすのは、インスリン抵抗性を助長するからです。インスリンはこの抵抗性を克服しようとします。その結果、インスリンレベルが急上昇します。 そのため、たとえ本プログラムが推奨する食事を摂り、食事時間枠を実行し、運動をしていたとしても、睡眠不足だと翌日にはインスリン(脂肪製造機)が多く分泌され、身体は脂肪蓄積モードになってしまうのです。 (本稿は、『英国の専門医が教える 減量の方程式』を一部抜粋・編集したものです)
サイラ・ハミード/児島 修