カメムシの次はガ…猛暑で害虫大発生、農作物に食害 「ヨトウ(夜盗)」の名の通り夜にうごめく幼虫、減農薬進めたいが…
農業の盛んな広島県世羅町で今夏以降、農作物に被害を与える害虫が相次いで発生している。特産のナシに猛威を振るったカメムシに続き、県内で2番目に生産量の多いキャベツに、ガの食害が出始めた。害虫の大発生は猛暑が影響しており、温暖化の進行で、国や町が奨励する減農薬の試みが進めにくくなっている。 【写真】中心部分を食い荒らされ、廃棄となるキャベツ
■「昨年は10月以降の収穫前の被害が大きかった。今後が怖い」
県西部農業技術指導所によると、同町のキャベツ畑では8月下旬から9月上旬までの間、ガの一種であるハスモンヨトウが前年同時期の2倍以上発生した。芯を食べるシロイチモジヨトウも増えている。 同町下津田の東祐樹さん(45)の畑約1ヘクタールでは8月に作付けしたキャベツのうち、1割近くが被害に遭った。結球前の柔らかい芯を食い荒らされているという。ガの大量発生は2年連続で、昨年は約2割を廃棄した。東さんは「昨年は10月以降の収穫前の被害が大きかった。今後が怖い」と顔をしかめる。
■ガの幼虫、夜に活発に動き、農薬以外での防除が難しく
県や町、東さんたち町内の農家は昨年、「循環型農業推進協議会」を発足し、国の補助金を活用して減農薬栽培に取り組んでいる。一方、ガの幼虫は体長1・5~50ミリ程度と小さい上、「ヨトウ(夜盗)」の名の通り夜に活発に動くため、大量発生しているキャベツ畑では農薬以外での防除は難しい。 実際、協議会は6月に防蛾灯(ぼうがとう)を東さんの畑に設置したが、農薬を減らせるほどの効果はないという。東さんは「農薬に耐性ができ、技術革新がないと虫の進化が先を行ってしまう。消費者には販売価格への転嫁を理解してほしい」と訴える。 県内の一大産地であるナシに続き、野菜でも害虫被害に予断を許さない状況。同協議会の会長を務める町産業振興課の垣内賢司課長は「環境面への配慮に加え、農薬を減らすことでのコスト削減が目的。減農薬は全国で取り組まれており、早期に推進して利益につなげたいが、一足飛びに進めるのは難しいと感じる」と話す。
中国新聞社