2075年の日本は「世界12位」に~ 小林鷹之が記す外交立て直し戦略
グローバルサウス諸国との連携強化
経済安全保障の最大の目的は何よりも経済成長だ。それを支える4つの柱の中に自律性の確保と不可欠性の獲得がある。自律性の確保としては主としてサプライチェーンの強靭化があるのだが、たとえば重要鉱物の場合、特定国への依存度を下げるため、輸入先の多角化が必要である。 そこで対象となるのが、インド、ASEAN、アフリカ、南アメリカ、太平洋島嶼国などのグローバルサウスと称される国々である。 わが国は長年、それぞれの国に対してきめ細かい外交を展開してきたため、日本に対して強い信頼を寄せる国もある。わが国の外交資産であるこの信頼関係を基にしつつも、今後将来にわたりわが国とグローバルサウス諸国(以下、GS)が「信頼」と「共通の利益」で結ばれ、わが国が、経済社会の繁栄を「共創」するパートナーとしてGSに「選ばれること」が重要である。 そのためには、GS諸国が有する食料・重要鉱物などと、日本が有する高度な産業技術や国内外の産業集積といった強みで互いを補完することで、互いの弱みを克服し、経済的発展につなげるWin-Winの関係を構築することが必要である。 近年、人口増加、経済力の向上、そして、豊富な天然資源を保有していることなどを背景に、GSの国際社会における発言力が増している。わが国の国益を確保するためにも、また、地域や国際社会の秩序を維持するうえでも、GSとの関係強化が重要である。
2075年の日本は「世界12位」
自民党において、2023年秋に「日・グローバルサウス連携本部」が設置され、現在、私が本部長を務めている。2024年6月に取りまとめた提言のサブタイトルは「パートナーとして選ばれる国へ」とした。 世界のGDPに占める日本のGDPの割合は、1995年には17.6%に達したが、現在は約4%と、1980年以降で見ると過去最低となっている。 ゴールドマン・サックス社の「グローバル・ペーパー 2075年への道筋」による世界GDPランキングによると、2022年のトップ15の中にGSはインド、ブラジル、メキシコの3カ国のみであったのが、2050年には7カ国、2075年には8カ国になると予想されている。 これは、2075年のGS全体の人口が世界の人口全体の7割を超えるほど人口増加が著しいことが、一つの要因であると考える。 一方で、日本の場合、2022年に3位であったGDPランキングは2075年に12位まで低下するとの予想である。こうした状況のなかで、新興国・途上国から見た日本の位置づけも当然、変化することが想定される。 そのため、わが国としてGSとの関係を戦略的に構築していく必要があるのだ。