「熊」を「切る」…ぶっそうな字面だけれど本来の意味は? 44歳でもグラビア現役!熊切あさ美・名字のルーツ
今年6月に44歳の誕生日を迎えた熊切あさ美。40代で再ブレイクし、現在もバラエティ番組などに多く出演するほか、現役のグラビアタレントしても活躍している。 【写真】熊切あさ美、おひとりさま生活を満喫中 この「熊切」という名字、珍しそうにみえて意外と多い。全国ランキングは5000位を少し下回るあたりだから、普通の名字と珍しい名字との境目あたりである。 「熊」を「切る」とはなんともぶっそうな字面だが、地名や名字に使われている「熊」は、動物の熊に由来するとは限らない。 古語で「くま」とは、「道や川などの折れ曲がっている所」をいう(小学館『日本国語大辞典』)。そして、山が褶曲してひだ状になっているときには、このひだの部分の奥まった場所も「くま」といった。 漢字では「隈」という字をあてることが多いが、ほかにも「久万」「球磨」「熊」など様々な漢字をあてた。たとえば、熊本市も古くは「隈本」と書いたが、江戸時代初期に加藤清正が「熊本」に漢字を改めたという。 従って、「熊切」も「熊を切った場所」ではなく、「くまきり」という場所に後から漢字をあてたものだろう。 では「くまきり」とはどういう場所かというと、「山のひだの奥まった場所=くま」を「切り開いた」ところを指すと思われる。そして、そこに住んだ人が名乗ったのが「熊切」さんである。 現在、「熊切」という名字の分布はかなり偏っており、静岡県・神奈川県・東京都・千葉県の4都県以外にはほとんどおらず、なかでも静岡県に圧倒的に多い。 静岡県浜松市に合併した旧春野町には天竜川水系の熊切川という川が東西に流れている。浜松市北部の山間部を蛇行して流れる川で、たくさんの「くま」があり、この流域をかつて熊切郷といった(現在は地名としては消滅)。 「熊切郷」は室町時代にはみられる古い地名で、ここをルーツとする「熊切」さんが最も多そうだ。ただし、今ではこの付近には「熊切」はなく、少し離れた掛川市に集中している。 この付近は、戦国時代末期に徳川家康の領地となっており、関東の「熊切」は家康とともに移り住んだ子孫と考えられる。 ◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。
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