東京海上Hなど損保3社、今期1.4兆円の政策株売却-還元強化へ
(ブルームバーグ): 東京海上ホールディングスなど大手損害保険グループ3社は20日、今期(2025年3月期)に合計で1兆4750億円超の政策保有株を売却する方針を示した。売却によって得た資金の一部は配当金など株主還元の強化に充当する。
東京海上Hは同日、24年3月末時点の時価ベースの政策株3兆5000億円(簿価は約4000億円)のうち、今期に6000億円(同530億円)を売却し、3年間で半減させると発表した。30年3月末までには全て売却する。保有目的を「純投資」に変更する形での削減は行わないともした。
同日の決算会見で岡田健司専務は、政策株の売却によって今期に株式売却益3900億円の計上を見込むと説明。「政策株をゼロにするということが、損保事業のより適切な競争環境を生み出す」と述べた。
企業向け共同保険料の事前調整問題を受けて東京海上H傘下の東京海上日動火災保険をはじめ大手損保4社は2月、金融庁に提出した業務改善計画書で、合計6兆円を超える政策株を全て売却する方針を明記した。損保4社の中で最も多額の政策株を抱える東京海上は唯一ゼロにする目標時期を示していなかった。
金融庁は政策株の存在が適正な競争をゆがめた一因だとして損保4社に売却を要請。MS&ADインシュアランスグループホールディングスとSOMPOホールディングスは30年3月末、31年3月末までに政策株をゼロにするとそれぞれ期限を示していた。
MS&ADは今期に6750億円の政策株売却によって5500億円程度の売却益計上を見込む。政策株ゼロについて田村悟専務執行役員は、保有株から得られる配当金は「収益として魅力的」として、適切な銘柄を選びながら純投資に振り向けて保有を継続するケースはあると述べた。
SOMPOの濵田昌宏グループCFOは足元で1兆8000億円程度ある政策株について今期に2000億円以上を売却する方針を示した。
各社は政策株の売却によって得た資金の一部を株主還元に振り向ける。東京海上HとMS&ADは前期の年間配当金を従来予想から上方修正したほか、今期の配当予想を前期比で大幅に引き上げた。SOMPOは今期、政策株売却益のうち50%を追加還元に充当する方針だ。