水俣病「全面解決」の機運、救済法案の成立に期待 自民の勢力低下時に2度「進展」
衆院選で「少数与党」になったのを好機と捉え、水俣病問題の「全面解決」を目指す機運が高まっている。立憲民主党が来年の通常国会で被害者の救済を柱とする法案を再提出する構えで、11日には超党派の国会議員の会合が開かれた。水俣病問題は過去2度、自民党の勢いが低下した時期に「政治解決」が図られた。弥縫(びほう)策を重ねる政府の対応により、なおも救われない人による訴訟が続く。3度目の政治解決になるか、関係者は注視する。 【図解】水俣病救済の政治解決を巡る主な動き 「絶好のチャンスを生かして、与党と野党がまとまって皆さんのご要望を入れた法案を提出したい。頑張っていきましょう」。11日午後の国会内。水俣病問題に取り組む「水俣病被害者とともに歩む国会議員連絡会」の事務局長で立民の野間健衆院議員(鹿児島3区)が訴訟の原告らに呼びかけた。 衆院選で立民などが議席を増やし、議連メンバーは野党中心に公示前から9人増えて53人まで拡大した。 水俣病を巡っては、国の厳しい患者認定基準に阻まれ、補償されない人が相次ぎ、政府は政治解決を2度試みた。 最初は、自民、社会、新党さきがけの連立政権だった1995年。幅広く水俣病と認める判決や和解勧告が相次ぎ、被害者に一時金を支給する救済策を閣議決定した。 2度目は、特有症状の感覚障害のみでも水俣病と認めた2004年の最高裁判決後、認定申請が急増したのを受け水俣病被害者救済法を制定した。自民党の支持率が低迷した09年7月のことで、翌月の衆院選では民主党が圧勝した。 同法は地域や年代で対象者を「線引き」するなど、被害実態に沿わず「全面救済」には程遠い。昨年以降、対象から漏れた人たちを水俣病と認める司法判断が続く。水俣病不知火患者会の元島市朗事務局長(70)は「救済されない被害者が存在していることが明らかになった」と強調する。 今年5月には伊藤信太郎環境相(当時)と被害者団体の懇談時に「マイクオフ」問題も発生。立民は先の通常国会に、12年前に申請が締め切られた救済策の再開や、住民健康調査の実施を盛り込んだ法案を提出したが、衆院解散で廃案に。救済の対象地域などを見直し、全面解決につながる法案の再提出を目指している。 浅尾慶一郎環境相は今年10月、本紙などのインタビューで「(2度の政治解決で)最終的かつ全面的な解決が図られた」と述べ、新たな救済に腰が重い。 衆院環境委員会の委員長を立民が獲得し、法案は野党が結束すれば衆院を通過する情勢。一方、参院は与党が過半数を占め成立は見通せない。それでも、苦労を重ねた被害者らの間では「数の力」を増した議連の動きに期待を寄せる。 3月の熊本地裁判決で請求を棄却された原告の藤下節子さん(67)は11日の会合で「国も県も裁判所も私たちを救ってくれない。(議連など)政治の力が最後の頼みです」と訴えた。(村田直隆)
西日本新聞