団地で暮らす高齢者の「現在」描く 映画「桜の樹の下」
高齢化が進む神奈川県川崎市の公営団地を舞台に、住人の暮らしを描いたドキュメンタリー映画「桜の樹の下」が横浜シネマリンで公開されている。今作がデビュー作となる20代の田中圭監督は多摩区在住。団地に計3年間通いつめ、孤独や貧しさと向き合う姿を淡々と、しかし温かい目線で切り取る。
登場人物は、夫と死別して小鳥の「ターちゃん」と暮らす関口ことじさん、モノを集めては捨てられず自宅がゴミ屋敷状態の岩崎びばりさん、週2回訪れるヘルパーさんとの交流を楽しみにする大庭忠義さん、団地自治会の副会長で、年金の足しに新聞やお弁当配達の仕事も持つ川名俊一さんの4人。最初の1年はほとんどカメラを回さず、お茶飲み友達のように過ごしたという。 自身も祖母と暮らす田中監督は、「一人暮らしの高齢者は、自分が一人という意識があるからこそ、他者とつながろうという気持ちがすごく、生き生きしている。高齢者の持っているエネルギーを伝えていきたい」と話す。5月21日の上映後に開催された中村高寛監督(『ヨコハマメリー』)とのトークでは、登場人物の過去ではなく現在に焦点を当てることを意識した、とも語った。
同作は2015年山形国際ドキュメンタリー映画祭の日本プログラム正式招待作品。同映画祭でも満席となり、評判を呼んだ。横浜シネマリンでの上映は5月27日まで。今後の上映スケジュールは公式サイトから。 (齊藤真菜)