雇われるだけじゃない。寝たきり社長が語る「障がい者が起業できる社会」
ウェブサイト制作会社「仙拓」の社長、佐藤仙務(ひさむ)さんと初めてお会いしたのは2015年11月だった。佐藤さんは、脊髄性筋萎縮症(SMA)という、筋肉が萎縮してしまう進行性の病気を患っている。そのため、生まれてからずっと寝たきりだ。 上場目指す“寝たきり社長”24歳、「体が動かなければ、頭を働かす」 「体は動かないけれど、頭は人と同じように働く」が口癖。ハンディキャップをまったく感じさせない、非常にパワフルな26歳の青年社長だ。その佐藤さんが、いつものようにフェイスブックで話しかけてきた。「また、本を出版しました!」「テレビで取り上げられました!」。
「先天的に障がいを持った社長」と「後天的に障がいを持った社長」
タイトルは『絶望への処方箋』(左右社)。共著者は、35歳の若さでJリーグ・FC岐阜の社長に就任した恩田聖敬(さとし)さん(39)だ。恩田さんは、社長就任と時をほぼ同じくして筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症、2015年末に社長を辞任した。いまは、自身の表現活動を行う「株式会社まんまる笑店」の社長を務めている。 本書は、「働くこと」をテーマにした、二人の対談だ。「先天的に障がいを持った社長と後天的に障がいを持った社長の違いが知りたかった」と、佐藤さんが恩田さんに働きかけて実現した。 恩田さんは、2014年の社長就任と同時にALSを発症した。ALSの発症を知った恩田さんの絶望が、ページから伝わってくる。五体満足だったときを知っているだけに、自分の体が動かない歯がゆさ。できることができなくなっていく……。 恩田さんと違って、佐藤さんは、生まれつきの寝たきりだ。「僕はもうずっとマイナス。ゼロにいこうが、プラスにいこうが、どちらにしろ僕にとっては儲けもん」とあっけらかんとしている。 それぞれが寝たきりになった事情は違うが、二人に共通するのは「働くことを諦めない」という信念だ。しかし、「働くこと」と「雇ってもらうこと」は必ずしも同じではない。彼らは、「仕事を作る」という強い意思を共通して持っている。