「花粉症の対策」実は夏が大事だった!専門医も効果を実感した根本治療とは?
鼻水、鼻詰まり、目のかゆみ、止まらないくしゃみ……。つらい症状に悩まされるスギ花粉症のシーズンが終わって、ホッとしている人は多いのではないだろうか。しかし根本治療の「舌下免疫療法」は6月~11月に行うべきだという。専門医に詳しく聞いた。(医療ライター 福島安紀) 【この記事の画像を見る】 ● スギ花粉に徐々に体を慣らす 舌下免疫療法 いまや国民病となった花粉症は仕事のパフォーマンスまで下げ、その経済損失は1日当たり約2215億円との試算もあるくらいだ。来年のスギ花粉症シーズンにつらい症状が出ないようにして、仕事のパフォーマンスも低下させないようにするにはどうすればよいのか。 花粉症の治療には、鼻水、目のかゆみなどのアレルギー症状を一時的に抑える対症療法と、アレルギーの原因そのものをターゲットにした根本治療がある。 「スギ花粉症を根本的に改善してスギ花粉が飛ぶシーズンに症状が出ないようにする治療として注目されるのが『舌下免疫療法』です。スギ花粉エキスを含む薬を使って徐々に体質を変え、原因物質が体に入ってもアレルギー反応が起きないようにする免疫療法です」 そう説明するのは、日本医科大学医学部耳鼻咽喉科学教授の松根彰志先生だ。対症療法はスギ花粉が飛散しているシーズン真っただ中に実施する治療であるのに対し、根本治療は、花粉が飛ばなくなった6月以降11月くらいまでに始めるのがポイント。 スギ花粉症が飛散している時期に始めてはいけないのは、スギ花粉に過剰に反応するとアナフィキシーショックを起こしやすいからだ。 「人にもよりますが、スギ花粉に対してアレルギー反応を起こす体質を変えるには2~3カ月以上はかかります。次のスギ花粉症シーズンに効果を実感するためにも、ぜひ、この夏からスギ花粉症の舌下免疫療法を始めましょう」
● 通院は必要だが 基本的には自宅で治療 そもそもスギ花粉症は、体を細菌やウイルスなどの外敵から守る免疫機構が、本来体に害のないスギ花粉を「外敵」と見なして反応し、体の外へ追い出そうとすることから起こる。 一定量のスギ花粉が体の中に蓄積すると、鼻水やくしゃみ、鼻詰まりなどの症状が出るのは、外敵である花粉を排除しようとする免疫機構が働くから。舌下免疫療法は、スギ花粉に体を慣れさせ、異物として攻撃しないように体質改善を目指す治療法だ。 具体的には、どのような治療なのだろうか。 「スギ花粉エキスを含んだ錠剤を舌の下に入れ、溶けるのを待ちます。その後5分間はうがいや飲食を控えます。副作用のチェックや薬を処方してもらうために定期的な通院は必要ですが、基本的には自宅でこの服用法を繰り返すだけの簡単な治療です。ただし、初回はアナフィラキシーショックを起こす可能性もあるので、医療機関の中で服用してもらい、10~15分程度様子を見ます」 最初の1週間は体を慣らすために低用量の錠剤を服用し、2週目以降は通常量の錠剤の服用を毎日続ける。服用後30分程度は、激しい運動は控えた方がよいという。主な副作用は、口の中のかゆみや腫れ、喉の不快感、皮膚のかゆみ、じんましんなど。特に、最初の1カ月は副作用が出やすいので注意が必要だ。 舌下免疫療法は保険診療で、薬代の自己負担額は3割負担の人で1カ月に3000円程度。朝食後など、服用するタイミングを決めておくと毎日飲む習慣がつきやすい。製薬企業が作成している専用アプリなどを活用して、飲み忘れを防いでいる人も多いようだ。