東京五輪でのポスト吉田沙保里に19歳・向田が名乗り!
リオデジャネイロ五輪から4ヶ月が経った。レスリングでは、来年の世界選手権代表選考を兼ねた天皇杯全日本選手権が行われた。選手兼任コーチへの就任を発表した吉田沙保里(34、フリー)が、本格的に現役続行するかどうかの正式な結論は出していない。コーチをしながらゆっくり去就を考えている吉田に代わり、女子53kg級日本代表の第一候補に、東京五輪で活躍する選手を育成するプロジェクト「JOCエリートアカミー」第3期生だった向田真優(19、至学館大学)が名乗り出た。 決勝までの3試合を6-2、6-0、8-2と圧勝し続けた向田は、初優勝の喜びを、言葉を選びながら静かに話し始めた。 「昨日は女子48kg級(第6期生、須崎優衣)、一昨日は女子55kg級(第6期生、南條早映)と、アカデミーでの後輩が金メダルを取ったので、私も後輩に負けないように勝ちたいと思っていました。全日本初優勝できて、2016年をよい形で締めくくれて嬉しいです」 嬉しいと認めながら、5月に全日本選抜で初優勝したときとは違い、向田がどこか陰りを残した笑顔だったのは、その内容に納得がいかないからに他ならなかった。 「いつもと違って試合で緊張しなかったので、それなら足が動くかなと思ったら一回戦目から全然、体が動かなくて余裕がありませんでした。気持ちだけで決勝までいけたのかなと思います」 決勝戦では、エリートアカデミー第1期生でもある宮原優(22、東洋大)が得意とする返し技で2点奪われたものの、第1ピリオドで8-2と大量リード。第2ピリオドは膠着したまま、ときに後ろに下がる様子も見せたが失点せずそのまま乗り切った。この内容に、向田は納得がいかない。 「第1ピリオドは納得の出来でしたが、第2ピリオドではほとんど守ってしまったので、自分の中では0点です。全体的に今回は、タックルが決まったとはいえ処理も雑で、いい形では入れなかった。でも(吉田)沙保里さんのタックルは速いだけじゃなくてテイクダウンまでしっかり処理できている。4月から至学館大学で一緒に練習するようになったので、沙保里さんからもいろいろと教えてもらっているのですが、私はまだまだですね」 自らの一年と、今回の試合について話し終わるころ、向田の瞳にはうっすら涙が浮かんでいた。悔しかったのか、感慨深かったのか。どんな激しい感情に包まれたのかはわからないが、向田は、心の揺れを表情にも言葉にも決して出そうとしなかった。