転んでもタダでは起きぬ! KYB免震不正の影響を受けた名古屋大学で地震再現実験
油圧ジャッキの引き離しで「地震!」再現
交換は1日1本で、計8日間かけて行われる。初日である3日は、午前中に現状の古い製品の取り外しを完了。正午過ぎに、ダンパーが1本ない状態で建物全体を揺らす実験をした。センターの飛田潤教授や学生らが基礎部分に入り、地震計や変位計、ねじれ振動などを測定するための機器を調整。計300トンの力で建物を引っ張ることのできる大きな油圧ジャッキの引き離しで震度2~3相当の地震を再現する段取りだ。 「3、2、1」の合図でジャッキが引き離されると、建物の一部がズルズルっと横に動いた。飛田教授は「いつもと少し揺れ方が違う感覚はした。ダンパーが1本ないときと、1本ずつ新品に交換したときとで、ダンパーや建物にかかる力がどう変わるかをさらに調べたい」と話していた。 この後、屋上の実験室でさらに振動実験を行い、午後からは新品のダンパーが搬入された。 センター長の福和伸夫教授は「実験によって、工場の中での製品の性能と、実際の現場で取り付けた製品の性能との整合性を把握できる。こんなことができるのは世界でもこの施設だけ」とした上で、「改ざんや不正は許されないが、すべてのダンパーに問題があったわけではないという、社会が冷静に受け止めるデータも取っておかなくてはならない。それを論文などの形で公表することは、免震建物の安全性確保のために意義がある」と強調。問題を逆手に取って研究開発を進める前向きさを示した。 (関口威人/nameken)