転んでもタダでは起きぬ! KYB免震不正の影響を受けた名古屋大学で地震再現実験
名古屋大学の防災・減災研究棟「減災館」で3日、地震時に建物の揺れを抑える役割を果たす「免震用オイルダンパー」の交換作業が始まった。2018年に不正が発覚したKYBグループ製で、データ改ざんの有無は不明だが、交換対象となっていた。名古屋大はこの交換を機に、ダンパーを1本入れ替えるごとに建物全体を人工的に揺らす実験を実施。建物の安全性を確認すると共に、得られたデータを今後の免震研究などに役立てる狙いだ。
KYB「データ改ざん」の影響で交換へ
減災館は2014年に竣工した地上5階建ての建物。名古屋大学減災連携研究センターが入る防災研究の拠点であり、免震構造の建物を人工的に揺らすことができる「実物大の振動実験施設」でもある。 建物と基礎の間は5つの積層ゴムで挟まれ、これだけでも地震の揺れが建物に伝わりにくくなっている。ただし、揺れ方の種類(周期)によっては建物が大きく揺れる場合もある。そんな時に効果を発揮するのがオイルダンパーだ。減災館の場合、基礎部分に取り付けた8本のオイルダンパーが地震による振動を吸収することで、建物の揺れが早く収まるようにする。この部分はガラス張りにして、普段から免震装置を見学できるようになっている。 同様のダンパーは全国のマンションやオフィスビル、自治体庁舎などに取り付けられている。しかし、メーカー最大手のKYBと子会社のカヤバシステムマシナリーが、国の性能評価基準を満たしていない不適合品を、検査データの書き換えによって適合品として出荷していたなどの不正が発覚。社会に大きな衝撃と不安を与えた。 KYBは、元の検査データが不明な物件を含め、全国991件の対象建築物について安全性の検証とダンパーの交換を進めてきた。名古屋大学の減災館はデータ不明物件の1つ。早い段階で建物全体の安全性能が確保されていることは明らかになっていたが、不適合品の使用が確認された愛知県庁舎などに続き、新品のダンパーと交換される運びとなった。 KYBによれば、昨年末時点で交換などの対応が完了したのはまだ全体の3割にとどまっている。