初勝利&本塁打の衝撃デビューのマエケンが「ここに来て良かった」
広島からポスティングでメジャーに移籍した前田健太(27)が現地時間6日、敵地のペトコパークで行われたパドレス戦で初先発、6回を投げ5安打、4奪三振、無四球、無失点、84球でマウンドを降り、7-0で初勝利を手にした。4回一死からは“9番打者”としてメジャー初本塁打まで記録した前田は、試合後、「ここに来て良かった」と、感動を隠さなかった。次戦は、本拠地開幕となる12日(日本時間13日)のダイヤモンドバックス戦となる。
憧れのマウンドに立った。 「興奮していました。初回に4点をとってベンチのムードもよかったので上がりやすかったです」 マエケンは、まずステップの歩幅をはかって、堅いメジャーのマウンドを何度も右足で掘り起こすようにして、プレートの足場を整えた。 記念すべき第1球は、144キロのツーシームだった。指にひかかってボールになったが、きちんとスライダーでカウントを整えてから、最後も外に少しボールを動かして先頭のジェイをセカンドゴロ。続くスパンゲンバーグには、躊躇なくインハイを攻めて詰まらせサードへのファウルフライに打ち取る。3番の昨季、23本塁打のケンプには、カーブが肩口から甘く入り、ひやっとする打球がレフトへ飛ぶが、フェンスの手前で打球は失速、重要な立ち上がりを3人で終えてマエケンはベンチに戻った。 二回には、一死から5番のソラーテが、初球に意表をつくセーフティバントを仕掛けてきた。三塁側に転がったゴロを素早く処理した前田だったが、一塁への送球が大きくそれる。走者は、二塁へ進み(記録は内野安打と前田のエラー)、一死二塁のピンチを背負うことになるが、ここからがマエケンの真骨頂だった。落ち着き、丁寧にコーナーを突く。ノリスを外のカットでサードゴロ。ラミレスも低めにボールを動かしてセカンドゴロ。寸分の狂いもない絶妙のコントロールである。
最初のハイライトは、4回一死走者無しからの9番打者・前田の打席だった。 ベンチでヘルメットがみつからず、打席に入るのが遅れた前田は、マウンド上のパドレス先発のキャシュナーに小さく頭を下げた。メジャーでは珍しいシーンだが、追い込まれてから、カーブをフルスイング。快音を残した打球は、レフトスタンドの最前列に飛び込んだのだ。メジャー2打席目で初本塁打を記録した前田が、両手をあげてベンチに戻ると、ナインの大歓迎を受けてもみくちゃになった。 「びっくりしましたねえ。まさか打てるとは思っていなかったが、打てて良かったです」 日本人投手のメジャー本塁打は、野茂英雄、吉井理人、石井一久に続き4人目である。 ベンチでは、エースのカーショーが「私は8年、メジャープレーしてきたが、まだ1本塁打だぜ! なんて衝撃的なんだ!」と、前田の仰天デビューを称えていた。 最大の山場は6回にあった。先頭のジェイにセンター前にポトリと打球を落とされ、無死一塁。続くスパンゲンバーグは、ショートゴロに打ち取ったが、ショートのシーガの併殺を狙ったセカンドへの送球をベースに入ったアトリーが、ポロっと落球したのだ。すぐにボールを拾ってベースタッチしたが、判定はセーフ。ドジャースは、チャレンジ制度を利用してビデオ判定を求めた。判定が覆ってアウト。救われたマエケンだったが、ケンプにセンター前ヒットを許し、一死一、三塁とされ、4番のマイヤーズを迎えた。 マイヤーズは、初球から打ってきた。一塁正面のゴロ。三塁走者が突っ込んでクロスプレーとなったがゴンザレスが本塁へストライク送球をして、判定はアウト。だが、今度はパドレスが「足が先に入っている」とビデオ判定を求めた。ジャッジに時間がかかり、約3分間、ゲームが中断したが、判定は変わらず、スタジアムは大ブーイングに包まれる。騒然とした雰囲気の中、なお、二死一、二塁と続くピンチに、マエケンは、5番のソラーテを最後は、チェンジアップでスイングアウトの三振。前田は、84球、無失点でデビュー戦のマウンドを降りた。 「(ポイントは?)6回ですね。ビデオ判定でアウトになった後に、しっかりと三振で終われた。ブーイングもありましたし、あの場面は大きかったと思う」 ドジャースは大量7点を挙げ、前田からバトンを受けたガルシア、ハウエル、ブラントンの3人が完封リレー。ゲームセットの瞬間、マエケンは満面の笑顔でベンチを飛び出した。 「凄くうれしいです。ランナーを出す場面が多かったが、粘り強く投げれて、無失点に終われたことが良かった。ここに来て良かったと思った。この瞬間を味わうために来た。ドジャースに来て良かったと思う」