初勝利&本塁打の衝撃デビューのマエケンが「ここに来て良かった」
臆せずに内角を突き、ホームベースの内、外をめいっぱいに使って精密に投げ分ける制球力と、打者の狙いを外していく投球術は、抜群だった。最速は148キロ。軸となったのは、ツーシームとスライダー。コントロールされたツーシームも、144、143キロ台で安定していた。イニングの間には、ベンチ内でチャート表を開きデータをチェック。綿密な配球を組み立てた。地元紙の報道によると、試合前にベテラン捕手のエリスと共にコンピューターの画面とにらめっこして、プランを練り、それを前田はメモしていたという。 スプリットが、ほぼなかったのは、不安視されている肘への負担を考慮してのものだったのか。 日系監督のロバーツ監督も「前田は非常に効率的だった。パドレスは前田にストレスを与えることができなかった」と、そのメジャーデビューとは思えぬ、円熟の投球術を絶賛した。 数年前からメジャー移籍を希望。昨季、チーム最多勝利を記録するなど、これまでの貢献度を考慮した広島が、ポスティング移籍を認めたが、事前のメディカルチェックで右肘に異常が発覚し、なかなか契約が進まなかった。ドジャースとは、8年2500万ドル(約30億円)をベースに最大8120万ドル(約97億円)という高額のインセンティブ(出来高)を織り込んだ異例の契約となった。ドジャース側は、右肘の爆弾が、最悪手術にいたるリスクを考えた上で、ベースの年俸を低く抑え、インセンティブでカバーする長期契約を持ち掛け、前田サイドが合意した。 「色々と、ここまで来るのに悔しい思いもしましたし、なかなかうまくいかないこともあった。でも、しっかりとこの場に立てた。勝利したことで報われたと思う」 勝利インタビューで前田は、経緯をこう振り返り、初勝利の喜びをかみ締めていた。