被団協「核なき世界が遠のくかも」、拉致被害者家族「強い米国になって」…トランプ氏に不安と期待
米国第一主義を掲げるトランプ氏の返り咲きが確実となり、日本の被爆者団体、環境団体、北朝鮮による拉致被害者家族からは、懸念や期待の声が上がった。
「大統領在任中に核実験を行うなど、常に核兵器への懸念が消えなかった。『核なき世界』の実現が遠のいてしまうかもしれない」。ノーベル平和賞に選ばれた被爆者団体の全国組織「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)」代表委員の箕牧(みまき)智之さん(82)(広島県)はトランプ氏を不安視する。
今回選でトランプ氏は、イスラエルによるイランの核施設攻撃を容認する考えを示した。箕牧さんは「被爆者の思いをむげにしないためにも、唯一の被爆国である日本の役割はさらに大きくなると思う」と話した。
米国はトランプ政権下の2020年に温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から離脱。バイデン政権下で復帰したが、トランプ氏は今回選でもパリ協定からの再離脱を主張した。NPO法人「気候ネットワーク」の浅岡美恵代表は「国際的な枠組みを嫌い、途上国への資金援助をやめるかもしれず、国際社会も混乱しそうだ」と懸念を示した。
一方、拉致被害者家族らはトランプ氏の手腕に期待を寄せる。トランプ氏は18~19年、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記との直接会談に臨み、日本人拉致問題に言及して解決を迫った経緯がある。
有本恵子さん(拉致当時23歳)の姉、尚子さん(66)によると、トランプ氏は17年、東京都内で父・明弘さん(96)ら拉致被害者家族と面会した後、「あなたのために全力を尽くす」と記した手紙をくれたという。尚子さんは「すごく優しい人柄を感じた。問題を解決するためにも、強い米国になってほしい」と語った。