人望厚い「ナイスパーソン」梁熙英のメジャー初制覇、ドラマの連続だった全米女子プロ選手権のフィナーレ飾る【武川玲子コラム】
◇米ツアー見聞録 23日に終了した女子メジャー第3戦、全米女子プロ選手権は山下美夢有が古江彩佳、畑岡奈紗を抜いてパリ五輪の日本代表の座を獲得。それ以外もドラマの連続だった。 米ワシントン州シアトル郊外のサハリーCCは高い米松や糸杉に囲まれ、狭いフェアウエーを一層狭くした難コース、多くの選手に牙をむいた。初日に69をマークして2位につけた世界ランキング1位のネリー・コルダ(米国)は2日目、プロとして自己ワーストタイの81を記録。3週間前の全米女子オープン選手権からまさかの3連続予選落ちで、「これが最近のゴルフ。家に帰って休みたい」と涙を流し、コースを去った。 その初日にトップに立ったのは今季限りで引退を表明しているレキシー・トンプソン(米国)。人気は絶大で、5位で迎えた最終日は大逆転が期待されたが、前半は8番を終えて8オーバー。しかし、9番のバーディーをきっかけに復調すると7つバーディーを奪い後半は31。9位に入り、来年の出場権を獲得、ファンからは「やめないで」と声が上がった。 メジャー初制覇を達成したのは34歳の梁熙英(ヤン・ヒヨン、韓国)。「メジャー未勝利のベストプレーヤー」と言われ、人望が厚く「ツアー一番のナイスパーソン」と呼ばれる。最終日、3打リードで迎えた18番、グリーン奥には総勢20人を超える選手やキャディーが待ち構えていた。中心にいたのは米LPGAツアーのモリー・マーコック・サマン会長で”シャンパンシャワー”の指揮を執っていた。多くは韓国勢だったが、同コースでの2016年大会で勝利したブルック・ヘンダーソン(カナダ)、リディア・コ(ニュージーランド)の姿もあった。 「梁はとにかく他人のことを大切する人。困っている仲間がいたら笑顔で助けてくれる」とコ。帽子に入るスマイルマークはメインスポンサーを失った梁が「帽子がさみしそうだったから」と自身でつけたもの。この勝利で世界ランキング5位にアップし、パリ五輪の韓国代表へ。笑顔と涙が交錯する忘れられない大会となった。(写真はAP)
中日スポーツ