大谷翔平はいかにして「動じない心」を手に入れたのか……運動科学の創始者が独自の身体論で読み解く「超一流」のメンタル
センターはプレー以外の場面でも活きる
ゴミ拾いも声出しも、言動だけを切り取ると、よくある「ちょっといい話」に見えてしまいますが、それが世界的な水準の試合の真っただなかで出てきたものであることを忘れてはいけません。 とくにWBCの決勝は、一流の選手でも怖いほどに気合が入り、あるいは他人を寄せつけないほどに緊張して心身が固まってしまってもおかしくない場です。 そんな場で、試合だけに意識を奪われることなく、仲間の心情を慮(おもんぱか)ったうえで深い知恵にあふれる言動が自然に出てくるのは、圧倒的なほど深くゆるんでセンターが通っていて、精神が自由闊達(じゆうかったつ)だからできることなのです。 人にはそもそも興味関心や価値観、もって生まれた才能・資質の違いがありますから、一般の人がトレーニングを積んだとしても野球で大谷と等しい能力を発揮することはないはずです。 しかし彼が有しているような「圧倒的なほど深くゆるんでセンター(軸)が通っている」身体と精神をつくり、自分本来のパフォーマンスを向上させることは決して不可能ではないはずですし、またあってよいことのはずです。 その方法の一端を私は、新刊『レフ筋トレ 最高に動ける体をつくる』で公開しました。次回の記事ではこの本のなかから、より具体的な方法論を抜粋してご紹介します。
高岡 英夫