新しいBMW8シリーズが販売終了へ 日本で購入できるのも残りわずかなM850i xDriveカブリオレに迫る
日本では販売終了へ
操縦感覚は、大人っぽい。大トルクをことさら強調するのでなく、アクセルペダルの踏み込み量など、あくまでもドライバーの意思に忠実な加速感をもつ。ステアリングフィールも落ち着いていて、鈍くは決してないが、高速をえんえん長距離走るようなドライブをしても疲れない。そこも魅力的だ。 快適性もしっかり考えられていて、足まわりにもそのコンセプトは感じられる。足まわりはよく動き、乗り心地はフラット。操縦している私に路面からのショックが強く伝わることもない。 それでいて、意識してアクセルペダルを強めに踏み込んだ加速の“抜け感”は抜群。それまで市街地を気持ちよく流していたとしたら、突然別のクルマになったと感じられるだろう。ドライブモードに応じてクルマのキャラクターがガラリと変わる設定が上手い。 サスペンションは「アクティブMサスペンション・プロフェッショナル」なる電子制御で、アクティブスタビライザーが組み込んである。車体のロールなど、コーナリングやハイウェイクルーズなど、状況に応じて調整し、スタイビラザーがしっかり効くべきハンドリングと、切り離したほうが快適になる乗り心地の両立が目指されている。 ステアリングシステムも同様で、車速や走行状況に応じて切れ角を調整する「インテグレイテッド・アクティブステアリング」を採用。これに後輪操舵機能も組み込んであり、ドライバーの意思に応じて、車体の動きが調整される。 さっとハンドルを切れば、舵角も少なくノーズが向きを変え、逆位相(前輪と反対がわ)を向き後輪によって、小さなスポーツカーを操縦しているような小回り性が得られる。 そもそも、3.0リッター6気筒エンジンでも十分力強い走りが味わえたが、M850i xDriveカブリオレのトルク感たっぷりの走行感覚には、また別の良さが感じられる。上記の装備によって、“鈍”な感じが、いっさい払拭されているのもたいしたものだ。 悲しいニュースは、24年6月をもって、今回試乗したM850i xDriveカブリオレを含む、8シリーズは、クーペもカブリオレもグランクーペも、それにMモデルも、すべて日本での販売が終了したことだ。あとは在庫を手に入れるしかない。欧州では生産が続くとのことで、ちょっと悔しい。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)