ウォール街出身の米財務長官、穏健的で中国に交渉余地か
(ブルームバーグ): トランプ次期米大統領がヘッジファンド運用会社を率いるスコット・ベッセント氏を財務長官に指名したことは、米中貿易摩擦を巡る交渉の余地を中国側に担保する可能性がある。
キー・スクエア・グループの最高経営責任者(CEO)を務めるベッセント氏は中国からの輸入品に高関税を課すというトランプ氏の方針について、「過激主義者の交渉姿勢」だと表現している。
だが、今月先に行われたCNBCとのインタビューでは、関税は「段階的に課していくべきだ」と述べ、漸進的な実施アプローチを促していた。トランプ氏による財務長官起用の発表は22日だった。
北京にある対外経済貿易大学(UIBE)のジョン・ゴン教授は「トランプ政権に席を確保しなければならなかったウォール街は、最も重要な席を手に入れた」と指摘し、このことは「中国政府にとって朗報」との見方を示した。同教授は中国商務省のコンサルタントを務めた経歴もある。
第2次トランプ政権の主要人事は、マルコ・ルビオ上院議員の国務長官やマイケル・ウォルツ下院議員のホワイトハウス国家安全保障担当補佐官といったタカ派の起用が目立つが、財務長官としてのベッセント氏は中国からすれば穏健派閣僚ということになるかもしれない。
オルブライト・ストーンブリッジ・グループのパートナー、エイミー・セリコ氏によると、米中間および世界的な問題について協議を継続したいと考えている中国政府にとって、ベッセント氏の指名は良い兆しだ。
米通商代表部(USTR)で中国問題担当シニアディレクターを務めたセリコ氏は、「ベッセント氏を中国政府と対話する可能性のある人物の1人とすることは、米中両国に余裕を与えるはずだ」と語った。
ただ、「順風満帆になると言っているわけではない」とも強調。実際、ベッセント氏は自社の調査を引用し、中国人民元の水準に不満を示している。
同氏は6月の会合で、中国は「内部で大幅な切り下げを行い、労働力をカットし、不動産の評価額を引き下げた。2011-12年に欧州で起こったことと非常に似ている」と述べ、「人民元は本当に調査すべきだと思う。人民元とドルの関係についてだ」と主張した。