水上恒司の「本心」。寂しがり屋だけど、誰かと一緒に生きていかなくてもいいと思っている
自分自身の“弱さ”について
――水上さんが岸谷として表現できたことはほかにありますか? 僕は本当に台本に書かれていることを忠実にやっただけなんです。意識したといえば……軽やかに演じようとは思いました。僕、普通にしゃべるとこんな感じで重々しくなっちゃうのですが(苦笑)、岸谷はそうではないので。 あと岸谷には若さ故の危うさがありますよね。「朔也さん、今これ流行ってるよ。だから置いていかれちゃダメだよ!」って、岸谷は良くも悪くも敏感にすぐ飛びついて。「もっとうまくやれるでしょ」と観る人に突っ込ませたくなる危うさは表現したいなと思っていましたね。 ――岸谷はご自身とは真逆のタイプですか? そうですね。それでもやっぱり共感できる部分はありますね。だからお客さんに観てもらえるような芝居になるというか。 ――少しでも共感できるほうがお芝居としても良くなる? もちろんです。自分の中にないものを演じるのは、すごく危険ですから。テクニックがあれば違うと思うのですが、僕の技術レベルだと……お遊戯会みたいになってしまいそうで怖いんです。 岸谷は自分が安心するため・生きていくために、朔也に執着して「閉じ込めておきたい」と思っているんですよね。それは弱い人間のすることだと思うけど、「世の中、みんな強くないよね」と僕は思うんです。だから岸谷の弱いところに、「わかるよその気持ち」という共感が生まれました。彼のことを素晴らしいとは思わないし、もっと強さを持ってほしいとは思うけど。 ――水上さん自身の弱い部分は? あまり人の前に立つのが好きじゃないところ(笑)。あと寂しがり屋なところもあれば、人と一緒に生きていかなくてもいいと思うところ。矛盾しているところが、ウィークポイントですかね。 ――そうした様々な感情に向き合えるから幅広い役ができるなど、逆にいいところもありそうです。水上さんは、作品のテーマでもある「誰かの本心を知りたい」と思うことはありますか。 自分の感情や心の声でさえ、僕たちは時として聞こえなくなってしまいますよね。だからこそ、他人の心はもっとわからない。でもわかろうと理解しよう、知ろうとすることが大事だと僕は思います。その人の感情をすべて理解できるなんて絶対にありえないけど、やっぱり知ろうとすること、努力することを諦めたら、いろいろ止まってしまうんだろうなと思います。 ――水上さんは本心を知りたい人とどんなコミュニケーションを取っていますか? 僕はなかなかうまく立ち回ることができないので、「知りたいです」と言うほかないんですよね。いきなり「知りたいです!」と言うと、人によっては怖がらせちゃうこともあると思うので、相手によって言い方は変えたりしているんですけれど……(笑)。