「頭を洗うと、ごっそり抜ける」抗がん剤の副作用でスキンヘッドに…落ち込む岸博幸を救ったのは“やしきたかじんの妻”の言葉だった
吐き気と食欲不振、抜け毛に悩まされる
翌日から覚悟していた副作用が出始めた。8月1日から5日間にわたり、胸がムカムカして、吐き気もひどく、何も食べられない状態が続いたのだ。甘いものが大好きな僕が、事前にコンビニで買っておいたお菓子を見ただけで、気持ちが悪くなったくらい。 ベッドの上で上体を起こしているだけで気分が悪くなり、活字を読むとめまいがする。ひどい二日酔いの状態で、大波に揺れる船に乗っているようなものだ。それが5日間続いたのだから、心身共に疲弊した。 それでも、抗がん剤投与から6日が過ぎた頃には吐き気がだんだんとおさまり、食事も食べられるようになった。人によっては3週間くらいは何も食べられない状態が続くこともあるそうなので、看護師さんいわく、すごく早い回復ペースだった。人並み外れた体力のおかげのようだ。 5日間は、点滴で薬と共に栄養分やカロリーを補給していたので、食事を食べられる喜びを改めて実感した。
吐き気と食欲不振に次いで、8月10日あたりから、次の副作用が始まった。抜け毛だ。シャワーを浴びて頭を洗うと、髪の毛がごっそりと抜ける。朝起きると枕の上に大量の抜け毛が散らばっている。入院してすぐに病院内の理容室で3ミリの丸刈りにするなど“対策〞は講じていたが、それでも、シャワーの際、手のひらにごっそりとついてくる抜け毛を見ると、すごく悲しい気持ちになった。 それからわずか数日で、カッコ良く言えばスキンヘッド、要は、ハゲになってしまった。僕は元来、髪が太くて、硬く、そして多い。薄毛とは無縁と思っていたから、やはり最初はかなり落ち込んだ。 それを救ってくれたのが、やしきたかじんさんの奥様だ。 たかじんさんには、『たかじんのそこまで言って委員会』(読売テレビ。現『そこまで言って委員会NP』)という番組でお世話になり、テレビの世界のイロハをいろいろと教えてもらうなど、ずいぶんとかわいがってもらった。僕にとって大恩人のひとりなのだが、とても残念なことに、2014年に食道がんで亡くなってしまった。 奥様とは、たかじんさんが亡くなってからは交流が途絶えていたのだが、僕の病気をニュースで知り、メールをくださった。 メールには、たかじんさんも、抗がん剤で頭髪が抜けたことが書かれていて、当時の写真が添付されていた。 これまで見たこともないくらい髪を短く刈り込んだたかじんさん、そして、スキンヘッドになった後に髪が少し生えてきた頃のたかじんさん。 たかじんさんも、僕と同じような思いをしながら頑張ったのだと思うと、ものすごく励まされた。 と同時に、たかじんさん、そしてバラエティ番組で鍛えられた、どんなことでも楽しんでしまうという精神が蘇ってきた。頭から髪の毛という存在が消えたのは、60年の人生で初めてのこと。いずれまた髪が生えてくるのだから、今この刹那のハゲを、思い切りエンジョイしよう。そんな風に、考え方が百八十度転換できたのだ。 奥様が送ってくれたたかじんさんの写真は、今もお守りとして僕のスマホの待ち受け画面になっている。 退院の翌週に『脱力タイムズ』収録『ミヤネ屋』生出演…がんと宣告され「余命10年」でも岸博幸がすぐにテレビ復帰した理由 へ続く
岸 博幸/Webオリジナル(外部転載)
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