「あとちょっとで歴史変わってた」 打ち切り危機からのし上がった人気マンガ3選
ヒットのポイントは主人公の「目」にも!
今や多くの人に知られている人気マンガでも、連載当初は打ち切りの危機に直面した作品も多く存在します。作品が大ヒットした経緯を振り返ってみると、原作者の努力や人間味を知ることにもつながり、物語にも深みが増すでしょう。今回は、打ち切りの危機にあったことがある名作マンガを振り返ります。 【画像】え…っ? 「動くとこ見たい」「かっこカワイイ」 これが実写『キングダム』4作目の女将軍「摎」のビジュアルです(4枚) ●『キングダム』(原作:原泰久)
『キングダム』は「週刊ヤングジャンプ」(集英社)にて連載中の歴史バトルマンガで、コミックス累計発行部数が1億部を突破している人気作品です。春秋戦国時代の中国を舞台に繰り広げられる壮大なアクションや個性豊かなキャラクターが魅力の同作も、連載当初は打ち切りの危機にあっていました。 「週プレNEWS」のインタビューで作者の原先生は、連載を始めて半年は人気が上がらず「常に打ち切りの瀬戸際にいました」とコメントしています。当時の担当編集者からも打ち切りを覚悟するよう言われていたことも明かしており、切迫した状況だったことがうかがえます。 そんななか、原先生はかつてアシスタントをしていた井上雄彦先生(『SLAM DUNK』『バガボンド』など)に「信の黒目が小さいだけ」とアドバイスをもらい、絵を見直したことが「日経クロストレンド」のインタビューで明かされています。これがきっかけとなり、原先生は作中の「王都奪還編」の途中から、信の黒目を大きく描き始めたそうです。 「王都奪還編」は、反乱を起こした王弟の成キョウから、国王のエイ政が玉座を取り返すまでの内容で、盛り上がるタイミングでもありました。そこで信の黒目を大きくした効果が功を奏したのか、成キョウを倒したあたりから読者アンケートで1位を獲得しています。 その後人気作となった『キングダム』は、2011年からアニメが始まり、2013年に第17回手塚治虫文化賞のマンガ大賞受賞、さらには2019年に実写映画化を果たして、興行収入57億円の大ヒットを記録しました。 ちなみに『キングダム』完全版に収録された原先生の解説コメントによると、最初はエイ政を主人公にして描くつもりだったものの、第1話のネームを練るなかで信を主人公に変えたとのことで、その都合で「僕の漫画の主人公顔なのは、政の方」「一方の信は、黒目が小さく目つきも悪くて、一見主人公っぽくない」というキャラデザになったことが語られています。 こういった事情を知ったファンからは、「目の描き方ひとつでこんなに変わるとはマンガって奥が深い」「井上先生の的確さもすごいし、素直に受け入れて作品を見直す原先生もさすが」など賞賛の声があがっています。 ●『銀魂』(原作:空知英秋) 『銀魂』は「週刊少年ジャンプ」にて2004年から2018年まで連載されたSFコメディで、TVアニメも人気を博し、2017年に実写映画化、コミックスの累計部数は5800万部以上を誇る人気作です。2021年の劇場版『銀魂 THE FINAL』で、アニメとしても完結しています。 『銀魂』は、物語の完結をほのめかしながらなかなか終了しなかった「終わる終わる詐欺」でも有名な作品ですが、連載当初はすぐにでも終ってしまいそうなほど、打ち切りの危機が迫っていたのです。 『銀魂』の連載開始当時は、『ONE PIECE』『NARUTO-ナルト-』『BLEACH』『遊☆戯☆王』といった人気マンガがひしめきあい、さらに連載開始の1週後には『DEATH NOTE』も始まる熾烈な争いがありました。その陰に隠れたのか掲載順位が上がらず苦労していたようで、マイナビニュースのインタビューでも人気が出るまで10週かかったことに関する質問に対し、作者の空知先生は「ビリッケツでした」「よく生き残れた」とコメントしています。 転機が訪れたのは第十七訓「酔ってなくても酔ったふりして上司のヅラ取れ」で、こちらは花見の場所取りをめぐって主人公の坂田銀時をはじめとする登場人物たちが、ドタバタ劇を繰り広げるエピソードでした。強烈な個性を持つ銀時の仲間たちと、治安維持組織でありながら個性豊かな真選組の面々など人気キャラが初めてそろい、キャラ同士の新たな絡みが生まれます。ここから作品も人気となり、第1巻は発売後にすぐ売り切れたそうです。