昔と今の東愛知新聞を比較考察
田原市図書館の村上さんが論文で
愛知県の田原市図書館職員の村上由美子さんが書いた論文「1963年から1965年の東愛知新聞に掲載された図書館・読書に関する記事について」が、昨年3月発行の中京大学図書館学紀要43号に掲載された。当時と今の本紙を比較、考察している。 村上さんは豊川市出身で、会計年度任用職員。初代館長の森下芳則さんの頃にも在籍しており、同館をよく知る1人だ。中京大学の臨時講師をしていた縁で今回の掲載となった。 図書館では所蔵していた昔の地方新聞などのマイクロフィルムをデジタルデータ化するとともに、田原市に関する新聞記事の見出しをフリーワードや発行年月日などから検索できるようにしている。そうした業務の傍ら、気付いたことをまとめたという。63年は本紙の前身となる「豊橋毎日新聞(旧夕刊とよはし)」と、「豊川市民新聞」「蒲郡日日」「新城新聞」の4紙が統合、東愛知新聞と改題した年だ。 記事について村上さんは、公共図書館▽学校図書館と学校▽悪書追放運動▽読書―と大別し、各種告知、利用者の読書傾向、図書館員が登場する記事などと多く見られた記事や印象的な記事について述べている。 現在との大きな違いの一つに、学校図書館や学校に関する記事が81件と非常に多いことを挙げている。中には教員らが開いた読書研究会や、学校図書館内であった展示を紹介する記事もあり、「新聞記者が学校図書館に取材に行っているということが、今では考えられない」と述べている。 興味深い記事として、63年当時の豊橋市立図書館の長谷川博彦館長の寄稿を紹介している。「みんなの図書館」というタイトルで寄せられたそれに「例えば、豊橋駅前あたりの“ビル”の一室に『貸出専門の図書館』でも設けたら、なんてことが図書館職員のなかで話し合われている」という一文があることに「『まちなか図書館』の予見ではないか。当時の図書館員が利用者のことを考え熱い議論をしていたことがうかがえる」としている。 当時の新聞にはインターネットがなかった時代ならではの記事も多い。村上さんはデジタルデータ化のプロジェクトを紹介しながら「今とは違う出来事や価値観が見られる。いろいろな発見や気付きがあり、面白いのでぜひ見てほしい」とPRした。 村上さんが書いた論文はインターネットから「中京大学学術情報リポジトリ」で、田原市新聞記事見出しデータベースは田原市図書館ホームページで、昔の紙面画像は田原市中央図書館内で見られる。本紙は63~91年のものがある。 【岸侑輝】
東愛知新聞社