AED解禁20年で8000人救命「市民が救命の主役になるパラダイムシフト起きた」…使用率の低さ課題
22年の統計によると、1か月後に日常生活に戻る「社会復帰」の割合も、AEDの電気ショックがあった場合は42・6%で、ない場合(5%)に比べて大幅に高くなっている。
街中に67万台
課題は使用率の低さだ。街中への設置は増えており、厚労省の推計で約67万台あるとされる。ただ、総務省消防庁によると、22年に人前で心停止状態となり、搬送された約2万8800人のうち、市民がAEDで電気ショックを行った割合は4・3%(約1200人)にとどまる。心停止の多くが自宅で発生することや、設置場所が十分に周知されていないことなどが背景にあるとみられる。
国士舘大の田中秀治教授(救急医学)は「現状の使用率は満足できる水準ではない。行政が積極的なAED利用を進めるとともに、心停止のリスクが高い高齢者らの住宅や地域に重点的にAED配置を考える必要がある」としている。
那覇市はコンビニ170店に設置
AED設置場所の周知不足などを解消するため、自治体は対策を進めている。
福岡市は、設置施設の登録制度を設けており、7月現在で1091施設が登録済み。市のウェブサイト「福岡市Webまっぷ」で位置や施設名を検索できる。
北九州市は「おたすけAED事業」と銘打ち、119番を受けた市消防局が、事前に登録した協力事業所に対し、貸し出しや現場への持ち込みを要請する体制を整えている。
宮崎県都城市は昨年1月、市内の大半の小中学校で設置場所を屋内から屋外(校舎外)に変更した。休日で学校が開いていなくても持ち出すことが可能になった。佐賀県教育委員会は、部活動の大会などでの事故に素早く対応できるよう、設置場所を来場者にアナウンスなどで知らせるようにしている。
利便性を高めるため、コンビニ店に置く動きもある。那覇市は市の負担で設置を進め、これまでに約170店に広がった。事業を始めた2012年から今月までにコンビニからの持ち出しは計71件に上り、うち3件は社会復帰につながったという。福岡県柳川市も市内の全23店と協定を結び、置いている。
◆AED(自動体外式除細動器)=血液を全身に送り出す心室がけいれんする不整脈の一つ「心室細動」を起こして心停止になった場合に、心臓に電気ショックを与え、正常なリズムで収縮できるようにする医療機器。体外(裸の胸の上)に貼った電極の付いたパッドから自動的に心臓の状態を判断する。