福島市にある県観光物産館の２０２３（令和５）年度の販売額は１０億８６０万円に達し、過去最高を更新した。東日本大震災と東京電力福島第１原発事故発生前の約４倍に当たる。売り上げ増を県内の観光と物産振興に着実に結び付けるよう求めたい。 　県観光物産館の売り上げは２０１７（平成２９）年１２月のリニューアルオープン後、年々増えている。県産酒をはじめ県内各地の加工食品、菓子、弁当、工芸品など常時約５５００品を取り扱い、一カ所で全県の逸品を購入できるのが魅力だ。きめ細かな配慮に基づく品ぞろえが好評を呼んでいる。 　週末は１日平均約３千人が訪れるものの、県北地方を主とした県民が中心で、県外は３割程度にとどまっている。人通りの多いＪＲ福島駅西口に近接したコラッセふくしま内にありながら、目立つような案内板はない。ホテルや飲食店の「口コミ」による集客に頼っているのが実情という。こうした課題は繰り返し指摘されてきた。

　物産館が有する公益性を踏まえれば、周辺の民間土産販売店などへの配慮は大切だろう。インバウンド（訪日客）は年々増加している。国内外に福島ファンを増やし、県内への誘客につなげる視点に立ち、効果的な広報策を練ってほしい。 　売り場は品ぞろえの充実に比例して手狭になっている。１００台収容の駐車場はコラッセの入居団体との共用で、実質的にはより少ない。さらに客を呼び込むには収容台数が足りないとの指摘もある。 　物産館を運営する県観光物産交流協会は、２０３０年度までに売り上げを現状より５千万円程度増やす目標を掲げている。達成には、販売スペースの確保や駐車場のあり方も検討すべきではないか。館内で開いている県内各地の物産展を充実させ、相乗効果で双方の売り上げを伸ばすような取り組みも推し進めたい。 　ＪＲ福島駅西口は、イトーヨーカドーの閉店に伴い「人や車の数が減った」との声も周辺住民から出ている。東口駅前再開発事業も遅れている中、中心市街地活性化に向けた物産館の集客力への期待は大きいと言える。堅調な売り上げを基盤に、街なか回遊の核としての機能を一段と高めるべきだ。（渡部総一郎）