子育て支援、ニーズとらえて 10代、ひとり親…悩む妊産婦 新知事へ「具体的な施策を」
核家族化や経済不安により、家族や知人を頼れず、孤独を抱えながら育児をする女性は少なくない。悩みを抱える妊産婦に寄り添う浜松市のNPO法人「HEALTHYFAMILY(ヘルシー・ファミリー)はままつ」の月1回の定例会では具体的な事例の報告が相次ぐ。「本人に発達障害の傾向があり、子どもの世話に混乱している場面があった」「配偶者の言葉遣いがきつく、虐待とまで言えないが子どもへ影響が心配だ」。子どもの発達状況に悩む母親、県外出身で親に助けを求められない女性-。妊産婦の支援にあたる関係者は「本当に必要な人に支援が届いていない」と指摘し、次期知事には「子育て世代の現状を把握して、具体的な施策を示してほしい」と訴える。 ■孤立の実態「丁寧に把握を」 同NPOは助産師や保健師らが家庭訪問員となり、悩みを抱える妊産婦に寄り添う活動を続けている。10代の妊婦やシングルマザーなど、育児に不安がある女性の相談に応じたり、家庭訪問したりして、親子の愛着形成を目指す。「支援を拒絶されないようにするにはどうしたらよいか」。継続的な関わりを続けるため、女性の性格や子育て方針、夫婦関係など対象者一人一人の状況を共有し、個人の実情に合わせた支援につなげている。 3年前に短大を休学して娘を出産した保育士の女性(21)は産院で同NPOを紹介されて支援を受け、産後の時期を乗り切ってきた。「自分だけで育てられるか不安しかなかった」と出産当時を振り返る。久保田君枝理事長(75)=聖隷クリストファー大助産学専攻科教授=が定期的に電話で保育士になる夢を応援したり、おむつやお尻ふきを持って訪問したりして自立を後押しした。 女性は「ひとり親で学生だから金銭面に不安があった。娘を連れて買い物に行くのも体力的に大変なため、物資をもらえて助かった」と感謝する。春から保育士として働き始め、娘と過ごす時間は減ってしまったが「仕事以外の時間は娘に愛情を注いでいきたい」と育児に前向きになった。 久保田理事長は「公的な子育て支援は拡充されているが、本当に困っている人にはなかなか届かない。例えば産後ケアは助成制度があっても貧困層は自己負担分を払えない」と指摘。行政に対しては「もっとニーズをよく把握し、安心して子育てができる環境を整備してほしい」と期待する。 〈メモ〉HEALTHY FAMILYはままつは2013年から活動するボランティア団体。会員は助産師や保健師、看護師ら13人。地域の産婦人科医院などと連携し、妊産婦の家庭訪問事業に取り組む。支援対象者は若年、ひとり親、外国籍のほか、経済的・精神的不安を抱える妊産婦ら。23年度の支援事例件数は22件だった。 ■政党公認、推薦候補者に聞きました 若年、ひとり親、経済的・精神的不安など、困難を抱える妊産婦対策に取り組む考えはあるか。 森大介氏(共産公認)母体の健康を守り、経済的な格差によらず、不安なく健やかに新しい命を育めるよう「妊産婦医療費助成制度」を創設する。 鈴木康友氏(立民、国民推薦)女性に関わる問題は多岐にわたる。県が今年3月に策定した「困難な問題を抱える女性支援基本計画」に基づき、女性相談支援センターや女性自立支援施設の充実を図るとともに、困難を抱える妊産婦の支援については、多角的な視点から、相談体制や支援策の強化を推進していく。 大村慎一氏(自民推薦)妊産婦支援なくして、安心して子を育てる社会は成り立たない。就業や住居の確保など、生活の基本となる部分への支援について、当事者の声も聞きながら、政策に反映させるよう、プロジェクトチームを立ち上げ、必要な予算対応、さまざまな困難の事情に応じたきめ細やかな対応を行う。
静岡新聞社