まるまる一匹茹でた羊はお供え最高位 日が昇る前、遊牧民はオボーに捧げる
日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。 ----------
2012年に私はジューグン・ウジュムチン・ホショーのサーメ・ソムにあるハダン・オボー祭りに参加することができた。シリンホト市からバスと乗合タクシーを利用し、6時間以上かかる道のりだった。 私がお邪魔した遊牧民のスルゲルンさんの家から、スルゲルンさんとバイクで20キロ先のオボーへ出発した。朝3時すぎにハダン・オボーに着いた。5つのゲルが立っていた。 私たちが1つのゲルに入ると、ちょうど、40代前後の夫婦が準備に追われていた。羊一頭を処分し、茹でた後、それを生きている羊の姿にして、オボーに捧げるように準備していた。これをブフリ・シュースと言う。いろいろな祭りや行事において、ブフリ・シュースは最高ランクの供物である。 少し経って、祭りを執り行うラマも到着した。僕はラマと他の地元の人々と一緒にオボーに登った。オボーを祭るのは基本的に日が昇る前である。モンゴルのオボー祭りは大きく二つの内容から構成される。 まず、「オボー・タヒホ」、つまりオボーを祭ること、そして、「オボーイン・ネール」、これは祭りが終わった後に行うナーダムのことであり、競馬と相撲と弓射が行われる。これをモンゴルでは「エリン・ゴルバン・ナーダム」、男の三競技と言う。(つづく) ※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮るーアラタンホヤガ第3回」の一部を抜粋しました。 ---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。