『虎に翼』三山凌輝がつらい展開の“救い”に 『HiGH&LOW』でも体現した葛藤と覚悟
『HiGH&LOW』『生理のおじさん』で抜群の表現力を見せつけた三山凌輝
天下井は他人を駒としか思っていない冷酷非情なキャラクターだが、その裏にはお金目当てで近づいてくる人々に辟易し、誰も信じられなくなったという背景があった。けれど唯一、幼なじみの須嵜亮(中本悠太)だけは天下井に忠誠を誓い、最後まで彼のためにボロボロになりながら戦った。そんな須嵜を前にした天下井の狼狽えた表情が信じたい気持ちと信じられない気持ちとの間で揺れ動く心の葛藤を映し出しており、単なる悪役ではなく深みのあるキャラクターとして『ハイロー』ファンの心に今も刻まれている。 「~っす」という若者言葉が抜けない正樹も最初は頼りなさそうな印象を受けたが、実際は上司である幸男にも物怖じせず意見をぶつけ、時には幸男の暴走を止める有能な部下だった。幸男が娘である花(上坂樹里)とラップで生理について議論を交わす場面でも、横から入って幸男の思いを代弁した正樹。そのスキルは言うまでもないが、正樹のキャラをブレさせず、演技の延長線上にあるラップを披露した三山に表現力の豊かさを見せつけられた。 今回、『虎に翼』で演じる直明は、大学進学を諦め、東京に戻り家族のために働くことを決意する心優しい青年だ。けれど、幼い頃から直明は勉強が好きで成績も優秀だった。ゆえに進学を諦めるにあたっては相当な葛藤があることだろう。三山がそれを抜群の表現力で見せてくれるのではないだろうか。また三山はまっすぐで嘘のない瞳が印象的で、『往生際の意味を知れ!』(MBS・TBS)では主人公の後輩で人気俳優の榊田正史を好演し、サスペンス色の強い作品に清涼感をもたらしていた。第9週から戦後に突入する『虎に翼』でも、三山演じる直明の存在が荒地に咲く花のような救いとなるはずだ。
苫とり子