松本若菜×松村北斗『西園寺さん』が“普通のラブコメ”ではないからこそたどり着けるもの
さらに、ここ最近(第4~5話)の展開では、西園寺さんが楠見への恋心を自覚したことで、ついに気持ちのバランスも崩れ、よりむずかしくなった。偽家族チームには愛だの恋だのが絡まない関係を望んでいたはずなのに、いっそのこと結婚したほうがいいのでは……?と、古来からある“家族”のカタチに当てはめたくなる自分がいる。 きっと“家族”の定義はそれくらい曖昧で、まだまだ不確かなのだろう。「パパのこと好きにならないで」といったルカが一方で「西園寺さんいなくなるのやだ」と涙したように。家事ゼロ生活を貫いていた西園寺さんが、ルカの誕生日パーティーで苦手な家事をやってあげたいと思ったくらい、あやふやで定まっていないものなのだ。 「本当は普通の家族なんて存在しないんじゃないかなって。なのに僕らは、その存在さえもしないものに振り回されてしまう」 第4話の楠見がいったように、実はその定義すらも存在しないのかもしれない。けれど、あやふやだからこそ、西園寺さんたちが望む新しい家族像に辿りつくことも出来るのではないだろうか。 今作が“普通”のラブコメディーならば、恋心を抱いた西園寺さんと楠見のすれ違いがつづくものだが、耐えきれなくなった西園寺さんはなんと早々に想いを打ち明ける。そう、新しい家族像を掴むためには対話するしかないのだ。トライアンドエラーを繰り返しながら、3人の“ちょうどいいところ”を探っていく。それができる西園寺さんなら連れて行ってくれる気がする、まだ見たことがない新しい景色へ。
明日菜子