今季J1リーグで“昇格組”3クラブ大健闘の異変…成績&集客力で驚き数値の実態【コラム】
磐田の問題は「自分たちの強さを認識していないこと」
今年のJリーグでは、ゴールの横のポケットをどうやって奪うかに工夫を見せるチームが多かった。基本的にはペナルティーエリアの角に1人、ペナルティーエリアの横に1人、その2人をともにサポートできるようなうしろのポジションという3角形からペナルティーエリアの中に侵入していく。 だが、磐田はペナルティーエリアの角からペナルティーエリア内の斜め方向にパスを通すというシーンを何度も作っていた。このほかのペナルティーエリアの攻略方法も多才で、横内昭展監督の分析力や構築力の確かさが窺える。また守備のスペースの消し方などは、非常に計算されたあとが見える。 磐田に問題があるとすれば、まだ自分たちの強さを認識していないことか。少し劣勢になるとたちまちバタバタしてしまう様子があった。まるで残留争いしているかのような戦いぶりに急に変わる。このチームは決してそんな弱さではない。 そしてこの3チームは、クラブの売上高がJ2にいた去年でも、J1の最下位ということではない。柏と湘南のデータはまだないが、磐田の売上高は去年のものでJ1の10位ある。今年は昇格効果でどのチームも収入増が見込まれるため、チームを下支えする資金もできるだろう。 こうやって昇格したチームが活躍してこそ、上下の入れ替えの意味が大きくなるというもの。この3チームのますますの躍進に期待したい。
2005年以降の昇降格チーム
【年度ごとの昇降格チーム】 2005年 昇格:川崎・大宮/降格:神戸・東京V・柏(※) 2006年 昇格:京都・福岡・甲府/降格:福岡・C大阪・京都 2007年 昇格:横浜FC・柏・神戸/降格:広島・甲府・横浜FC 2008年 昇格:札幌・東京V・京都/降格:東京V・札幌 2009年 昇格:広島・山形/降格:柏・大分・千葉(※) 2010年 昇格:仙台・C大阪・湘南/降格:FC東京・京都・湘南 2011年 昇格:柏・甲府・福岡/降格:甲府・福岡・山形 2012年 昇格:FC東京・鳥栖・札幌/降格:札幌・G大阪・神戸 2013年 昇格:甲府・湘南・大分/降格:湘南・磐田・大分 2014年 昇格:G大阪・神戸・徳島/降格:大宮・C大阪・徳島 2015年 昇格:湘南・松本・山形/降格:松本・清水・山形 2016年 昇格:大宮・磐田・福岡/降格:名古屋・湘南・福岡 2017年 昇格:札幌・清水・C大阪/降格:甲府・新潟・大宮(※) 2018年 昇格:湘南・長崎・名古屋/降格:柏・長崎 2019年 昇格:松本・大分/降格:松本・磐田 2020年 昇格:柏・横浜FC/降格:なし(※) 2021年 昇格:徳島・福岡/降格:徳島・大分・仙台・横浜FC 2022年 昇格:磐田・京都/降格:清水・磐田 2023年 昇格:新潟・横浜FC/降格:横浜FC ※の年は昇格したチームが降格していない [著者プロフィール] 森雅史(もり・まさふみ)/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。
森雅史 / Masafumi Mori